心筋梗塞、脳梗塞などの疾病予防のため降圧、糖尿病管理などが行われる。降圧薬の効果は血圧で簡便・正確に計測できる。血糖もしかりである。アスピリン、クロピドグレルなどの抗血小板薬の効果を簡便・正確に計測する方法は確立されていない。このため、新薬が開発されるごとに古い薬の「抵抗性」などが強調された。クロピドグレルの特許切れ前には「アスピリン抵抗性」などが喧伝された。簡便・正確な薬効指標がないため、反論は困難であった。一世を風靡したクロピドグレルも特許切れした。同一の薬効標的に対してプラスグレル、チカグレロルが開発された。しかし、臨床家が実感できるクロピドグレルの欠点を探すのは困難であった。多くの医師は自らが処方する多く薬剤の代謝経路など理解していない。しかし、クロピドグレルについてはCYP2C19という肝酵素により活生体が産生されることが強調された。CYP2C19の遺伝子型も解明され、代謝の速いヒト、遅いヒトがいるとされた。代謝の遅いヒトではクロピドグレルの効果が発現しないように喧伝された。日本人を含むアジア人では代謝の遅いpoor metabolizerが多いのでクロピドグレルが効きにくいとされた。クロピドグレルの臨床開発に寄与して、日本人はむしろ効き過ぎて出血が増える懸念があるとして50mgの減量を承認したプロセスを熟知する筆者には世の中の風の変化が驚きであった。