これまでCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者に吸入ステロイドを投与することは市中肺炎発症リスクの増加と関連するとされてきた。しかしながら、その一方で、吸入ステロイドは肺の合併症や肺関連死のリスクを減少させるということも報告されている。
スペインの Jacobo Sellares氏らは過去の吸入ステロイド投与の有無が、異なる呼吸器疾患の背景を有する肺炎随伴性胸水にどのような影響を及ぼすのかを調べた結果、吸入ステロイドによる治療を受けた群で肺炎随伴性胸水が減少していたことを報告した。 American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌2013年6月1日号の掲載報告。
肺炎随伴性胸水が有意に少なかった
市中肺炎と診断された3,612例に対し、臨床的検査、放射線学的検査、胸水生化学検査、微生物学的検査を実施し(単一施設コホート)、過去の吸入ステロイドによる治療の有無で2群に分け、解析した。
過去の吸入ステロイド投与の有無が肺炎随伴性胸水にどのような影響を及ぼすのかの主な結果は以下のとおり。
・対象の17%にあたる633例が、肺炎と診断される前に吸入ステロイドによる治療を受けていた(COPD 54%、喘息 13%)。
・吸入ステロイドによる治療を受けていた群では、そうでない群に比べ、肺炎随伴性胸水が有意に少なかった(5% vs12%、p<0.001)。
・傾向スコアによりマッチングさせた640例においても、同様の傾向が認められた(オッズ比: 0.40、95%信頼区間[CI]0.23~0.69、p=0.001)。
・吸入ステロイドによる治療を受けていた群では、胸水中のグルコースとpHが有意に高く(それぞれ、p=0.003、p=0.02)、タンパクと乳酸脱水素酵素(LDH)は有意に低かった(それぞれ、p=0.01、p=0.007)。
(ケアネット 鎌滝 真次)