長時間作用型注射製剤の抗精神病薬は、幅広い統合失調症疾患群で薬物治療のアドヒアランスおよび再発の低下を目的に用いられている。しかし、第二世代と第一世代の抗精神病薬について、長時間作用型注射製剤に関する相対的な有効性の評価は行われていなかった。米国ジョージア・リージェンツ大学のJoseph P. McEvoy氏らは、統合失調症または統合失調感情障害の成人患者を対象に、第二世代のパリペリドンパルミチン酸と第一世代のハロペリドールデカン酸の有効性を比較する多地域二重盲検無作為化試験を行った。その結果、パリペリドンパルミチン酸治療は、ハロペリドールデカン酸治療と比べて、治療不成功について統計的有意差は示されなかったことが明らかにされた。一方で、体重増加や血清プロラクチン値上昇との関連が認められたが、アカシジアとの関連はハロペリドールデカン酸でみられた。著者は、「それでも信頼区間(CI)値から、パリペリドンパルミチン酸には臨床上の有効性のアドバンテージがある可能性は排除できない」と述べている。JAMA誌2014年5月21日号の掲載報告。
試験は2011年3月~2013年7月に米国内22施設で行われた。無作為化を受けた被験者は、統合失調症または統合失調感情障害と診断された成人で、再発リスクがあり、長時間作用型注射製剤の抗精神病薬が有益だと考えられた成人の患者であった。主要評価項目は治療不成功で、精神科病院への入院、急性期症状で安定化を要した、外来通院頻度が大きく増大、担当医が長時間作用型注射製剤の投与開始後8週間以内に経口薬を中止できなかった、あるいは有益性が不十分であるとして注射製剤投与を中止した、により特定した。主要副次アウトカムは、抗精神病薬治療の一般的な有害事象とした。
主な結果は以下のとおり。
・被験者は311例で、筋注で24ヵ月にわたり毎月1回、ハロペリドールデカン酸25~200mgもしくはパリペリドンパルミチン酸39~234mgの投与を受けた。
・パリペリドンパルミチン酸の治療不成功率は、ハロペリドールデカン酸と比較して統計的有意差はみられなかった(補正後ハザード比[HR]:0.98、95%CI:0.65~1.47)。
・治療不成功の患者数は、パリペリドンパルミチン酸群49例(33.8%)、ハロペリドールデカン酸群は47例(32.4%)であった。
・平均して、パリペリドンパルミチン酸群では体重増加が、ハロペリドールデカン酸群では体重減少がみられた。6ヵ月時点で、パリペリドンパルミチン酸群の患者の体重(最小二乗法で変化の平均値を算出)は2.17kg(95%CI:1.25~3.09)増加し、ハロペリドールデカン酸群では-0.96kg(同:-1.88~-0.04)低下した。
・パリペリドンパルミチン酸投与患者は、血清プロラクチンの最大平均値が有意に高値だった。すなわち、男性では34.56μg/L(95%CI:29.75~39.37)vs. 15.41μg/L(同:10.73~20.08)であり、女性は75.19μg/L(同:63.03~87.36)vs 26.84g/L(同:13.29~40.40)であった(男女ともp<0.001)。
・ハロペリドールデカン酸投与患者では、アカシジアの全体評価において有意な増大がみられた(0.73[95%CI:0.59~0.87] vs 0.45 [同:0.31~0.59]、p=0.006)。
関連医療ニュース
月1回の持効性抗精神病薬、安全に使用できるのか
第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析
急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は
(ケアネット)