米国・バージニア大学のPaula A. Aduen氏らは、注意欠如・多動症(ADHD)、うつ病を有するドライバーと、精神疾患のないドライバーを比較し、衝突事故等との関連を調べた。結果、ADHDドライバーとうつ病ドライバーでは交通違反や衝突事故リスクが異なり、ADHDは多様な衝突事故や違反、衝突関連の障害と特異的に関連している一方、うつ病は自己報告による衝突後の受傷と関連していると思われる所見が示されたという。Psychiatric Research誌2015年5月号の掲載報告。
臨床においてほとんど議論にならないが、自動車運転は、複雑で多岐にわたる動作努力を要し、瞬間的な不注意が壊滅的な結果を招く。先行研究において、ADHDのような罹病率の高い精神障害は、過度の衝突率に関連し、種々の有害な社会的、経済的、健康、死亡そして法的なアウトカムの前兆となることが示唆されていたが、自己バイアスや精神疾患の比較群の欠落により、所見は限定的なものにとどまっていた。
研究グループはそうした限界に焦点を当て、ADHD、うつ病と、有害運転アウトカム、自己バイアスのない選択、運転曝露および紹介バイアスとの特徴的な関連を調べるStrategic Highway Research Program(SHRP-2)Naturalistic Driving Studyを行った。試験には、確率抽出法に基づくサンプリングにより6地域から米国ドライバーが参加し、Barkley ADHD評価、精神科診断質問票によって、ADHD群(275例)、うつ病群(251例)、健康対照(1,828例)にグループ分けされた。主要アウトカムは、自己報告による衝突事故、走行中の交通違反、衝突に関連した受傷および障害(過去3年間における)が含まれた。
主な結果は以下のとおり。
・ADHDは、多様な違反(OR:2.3)や衝突(同:2.2)、また衝突関連の障害(同2.1)のリスク増大要因となることが、統計学的差をもって示された。うつ病についてはいずれも認められなかった。
・一方、ADHDにはなくうつ病がリスク増大要因となることがみられたのは、自己報告による衝突後の受傷であった(OR:2.4)。
結果を踏まえ、著者らは「こうしたリスクの特異的な基礎メカニズムを明らかにすることが重要であり、高罹病率の精神障害を有するドライバーについて長期的な機能改善を図る効果的な研究を考案することが求められる」とまとめている。
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