抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/07/27 統合失調症治療において、抗精神病薬の多剤併用を支持するエビデンスはほとんどなく、また診療ガイドラインでこれを推奨していないにもかかわらず、広く普及したままである。米国・サウスフロリダ大学のRobert J Constantine氏らは、2種類の抗精神病薬による治療で安定している患者を対象に、1種類の抗精神病薬への切り替え効果を検討するため、無作為化比較試験を行った。Schizophrenia research誌2015年8月号の報告。 7つの地域精神保健センターからエントリーした、2種類の抗精神病薬での併用治療により安定している成人統合失調症外来患者104例を対象に、多剤併用療法を継続する群(多剤継続群)と抗精神病薬の単剤療法に切り替える群(単剤切り替え群)に無作為に割り付けた。60日ごとに症状と副作用の評価を行い、1年間追跡した(合計7回評価)。評価項目は、症状(PANSS、CGI)と副作用(EPS、代謝関連、その他)の時間経過における違いとし、各群への割り当てと時間を関数として、ITT分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・単剤切り替え群は、多剤継続群と比較し、症状の増加がより大きかった。 ・これらの違いは、試験開始6ヵ月目に出現した。 ・試験期間1年間における全原因中止率は、単剤切り替え群(42%)のほうが、多剤継続群(13%)と比較して高かった(p<0.01)。 ・副作用に関しては、多剤継続群においてSimpson Angus合計スコアが単剤切り替え群と比べて大幅に減少した以外では、いずれの時点においても単剤切り替え群と比較して差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「2種類の抗精神病薬で安定している慢性期統合失調症患者に対する単剤療法への切り替えには、注意が必要である。多剤併用の中止にあたっては、多剤併用療法に移行する前に単剤療法で効果不十分な患者を対象とした、エビデンスに基づく治療(たとえばクロザピンや持効性注射剤など)の適切な試験が行われるべきである」とまとめている。 関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 抗精神病薬の変更は何週目が適切か 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Constantine RJ, et al. Schizophr Res. 2015 Aug;166:194-200. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)