双極性障害の自殺予防、どうすべきか

双極性障害は自殺企図および自殺死リスクの増加と関連している。国際双極性障害学会(ISBD)では、双極性障害における自殺企図・自殺死に関する疫学、神経生物学および薬物治療に関して現存の文献を検討し、タスクフォース報告書としてまとめた。その中で筆頭著者のカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、推定自殺率が過去の報告よりも低かったことを報告した。そのほか、最も多い自殺の方法や全体的なリスクなどを明らかにしたうえで、「こうした理解が、双極性障害における自殺予防に対する認識の高まりや、より有効な治療法の開発につながる」と述べ、「リスク低減や治療進展のために、遺伝学的知見の再現研究や治療オプションの、より信頼できる前向きデータが必要である」と指摘している。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月16日号の掲載報告。
著者らは、1980年1月1日~2014年5月30日までの双極性障害患者における自殺企図または自殺死に関する論文を対象に、システマティックレビューを行った。対象とした研究は、双極性障害における自殺企図または自殺死の発生率、特徴、遺伝学的/非遺伝学的生物研究、双極性障害に特化した薬物療法の論文などで、自殺率について加重統合解析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・双極性障害における統合自殺率は、164/10万人年(95%信頼区間 :5~324)であった。
・性別に特化した自殺率データにより、男女比は1.7対1と算出された。
・双極性障害患者は全自殺の3.4~14%を占めていた。方法としては服薬自殺、首つり自殺が最も多かった。
・疫学研究の報告によると、双極性障害患者の23~26%に自殺企図が認められ、臨床サンプルにおいてより高率であった。
・双極性障害では自殺企図および自殺死における遺伝学的関連が多く認められるが、それを再現する研究はほとんど行われていなかった。
・リチウムあるいは抗けいれん薬を用いた治療データにより、自殺企図および自殺死の予防効果が強く示唆された。ただし、自殺に対する相対的な効果の確定にはさらなるデータが必要である。
・抗精神病薬あるいは抗うつ薬を用いた治療の、自殺予防効果の可能性に関するデータは限定的なものであった。
関連医療ニュース
双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか
統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学
自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か
担当者へのご意見箱はこちら
(ケアネット)
[ 最新ニュース ]

PCI後DAPT例の維持療法、クロピドグレルvs.アスピリン/Lancet(2025/04/14)

3枝病変へのFFRガイド下PCIは有効か/Lancet(2025/04/14)

HR+早期乳がんにおける年齢と内分泌療法の中断期間、再発リスクの関係/JCO(2025/04/14)

ポリープの家族歴、頻度・人数が多いほど大腸がんリスク増加(2025/04/14)

うつ病やPTSDに対するブレクスピプラゾール+抗うつ薬併用療法〜前臨床試験のシステマティックレビュー(2025/04/14)

水中エアロビクスは減量とウエスト周囲径の減少に効果あり(2025/04/14)

睡眠不足の看護師は感染症に罹患しやすい(2025/04/14)

バターを植物油に置き換えると死亡リスク17%減(2025/04/14)
[ あわせて読みたい ]
Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07)
薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30)
全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31)
ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15)
診療よろず相談TV(2013/10/25)
在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)
「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)
柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)
松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20)
シネマセラピー ~シネマにみるメンタルヘルス~(2013/04/26)