失禁によって引き起こされる皮膚損傷の機序は、さまざまな実験的研究から提示されているが、長期臥床者で失禁に起因する皮膚特性を検討した研究は非常に限られている。花王株式会社 生物科学研究所の藤村 努氏らは、寝たきり高齢者、健常高齢者および壮年者とで失禁による皮膚特性の変化を比較検討し、その違いを明らかにした。著者らは、「今回検討したパラメータが、失禁に起因するおむつ皮膚炎を防ぐための新しいおむつの開発に適していることが示された」とまとめている。International Journal of Dermatology誌オンライン版2015年12月29日号の掲載報告。
研究グループは、寝たきりの失禁を伴う高齢者35例(平均83.5±9.7歳)、失禁のない健常高齢者41例(75.9±5.6歳)および壮年者20例(41.3±2.8歳)を対象に、前腕および臀部の皮膚pH、皮膚水分量、経皮水分蒸散量および細菌数について測定した。
主な結果は以下のとおり。
・臀部の皮膚水分量および経皮水分蒸散量は、失禁高齢者と健常高齢者とで有意な差が認められた。
・臀部の皮膚pHおよび細菌数についても、同様の結果が観察された。
・前腕では、これらのパラメータについて有意差は認められなかった。
・臀部の皮膚pHを除き、排尿の有無で有意差はなかった。
・失禁を伴う高齢者において臀部の皮膚pHと細菌数に有意な相関が認められたが、それ以外は観察されなかった。
(ケアネット)