日本頭部外傷データバンクは、日本脳神経外傷学会のプロジェクトである。日本の頭部外傷診療の現状の把握を目的に、1996年に日本頭部外傷データバンク検討会が設立され、1998年より重症頭部外傷患者を対象とした間欠的に2年間の疫学研究を開始。現在まで、Project1998、2004、2009が行われ、このたび、Project2015の解析が開始された。その概要について、日本脳神経外科学会 第77回学術総会において、山口大学 脳神経外科 末廣 栄一氏が発表した。
登録対象症例は2015年4月1日~2017年3月31日に、搬入時あるいは受傷後48時間以内にGlasgow Coma Scale(GCS)8以下、あるいは脳神経外科手術を施行した頭部外傷症例(0歳を含む全年齢)。Project2015の参加施設は33施設、症例数は1,345例であった。
主な結果は以下のとおり。
・患者の平均年齢は58.8歳で、70歳以上が以前に比べ著しく増加していた。
・主な受傷機転は、交通事故が41.9%、転倒・転落が40.8%であった。
・搬入時GCSスコアは7.3で、重症度は低下傾向であった。
・外科的処置は67.4%の患者に施行されており、過去の2回に比べ、増加傾向に
あった。
・頭蓋内圧センサーは36.7%に留置され、こちらも増加傾向であった。
・鎮静・鎮痛、高浸透利尿薬、抗てんかん薬などの薬物療法施行率は66.5%で
あった。
・退院時の転帰は、転帰良好30.3%、死亡35.8%であった。
プロジェクトごとに患者の高齢化は進行している。しかし、外科的治療も含めた積極性は向上し、前Projectに比べ、転帰は維持されていた。
(ケアネット 細田 雅之)