転移を有する胃がん(mGC)の予後は不良で、5年OS率は4%とされる。また、3次治療の選択肢が限られており、高度の前治療を受けた患者における課題は多い。トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)(商品名:ロンサーフ)は、治療歴のあるmGC患者を対象にしたわが国の第II相EPOC1201試験で、全生存期間(OS)中央値8.7ヵ月、病勢コントロール率(DCR)65.5%という成績が報告されている。ドイツ・ミュンヘンにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、3次治療以降の転移を有する胃・胃食道接合部がん(mGC/GEJC)患者を対象に、FTD/TPIとプラセボを比較したTAGS試験の結果が報告された。
TAGS試験は、世界17ヵ国110施設で実施された、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第III相無試験。
・対象:2ライン以上の治療歴(フルオロピリミジン、プラチナ、タキサン、イリノテカン、HER2阻害薬)のある、転移を有するmGC/GEJC患者。ECOG PSは0および1。
・試験群:FTD/TPI (35mg/m2 BID、day1~5と8~12、28日サイクル)+BSC
・対象群:プラセボ(BID 、day1~5と8~12、28日サイクル)+BSC
・評価項目:[主要項目]全生存期間(OS)、[副次項目]無増悪生存期間(PFS)、安全性、全奏効率(ORR)、DCR、PSが2以上に悪化するまでの期間、QOL。
治療は、増悪、不耐、患者の脱落が起こるまで行われた。クロスオーバーは許容されていない。
主な結果は以下のとおり。
・507例が登録され、FTD/TPI群337例、プラセボ群170例に2対1に無作為に割り付けられた。
・66%の患者が3ライン以上の治療歴を有する、高度治療集団であった。
・OS中央値は、FTD/TPI群5.7ヵ月、プラセボ群3.6ヵ月、12ヵ月OS率は、FTD/TPI群21%、プラセボ群13%で、FTD/TPI群が有意に良好であった(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、片側p=0.0003、両側p=0.0006)。
・OSのサブグループ解析では、ほとんどの項目でFTD/TPIが優れていた。
・PFS中央値は、FTD/TPI群2.0ヵ月、プラセボ群1.8ヵ月で、FTD/TPI群が有意に良好であった(HR:0.57、95%CI:0.47~0.70、両側p=0.0001)。
・ORRは、FTD/TPI群4%、プラセボ群2%、DCRは、FTD/TPI群44%、プラセボ群14%で、FTD/TPI群が有意に良好であった(両側p<0.0001)。
・PSが2以上に悪化するまでの期間は、FTD/TPI群4.3ヵ月、プラセボ群2.3ヵ月で、FTD/TPIで有意に長かった(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、両側p=0.0005)。
・全原因による有害事象(AE)の発現は、FTD/TPI群97%、プラセボ群93%、Grade3以上のAE発現はFTD/TPI群80%、プラセボ群58%であった。
(ケアネット 細田 雅之)