臨床試験において、コリンエステラーゼ阻害薬開始後の抗コリン作用性負荷と治療変容との関連を評価した研究は、ほとんどない。韓国・嶺南大学校のYoung-Mi Ah氏らは、認知症治療の変容、せん妄、死亡率に対する抗コリン作用性負荷の影響を評価するため、検討を行った。Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology誌オンライン版2018年12月3日号の報告。
韓国の国民健康保険サービスの高齢者コホートデータベース(Korean National Health Insurance Service Senior Cohort Database)より、2003~11年にコリンエステラーゼ阻害薬を開始した高齢者2万5,825例をレトロスペクティブに分析した。最初の3ヵ月間のAnticholinergic Cognitive Burden(ACB)の1日平均スコアが3超を、抗コリン作用性高負荷と定義した。治療変容、せん妄、死亡に対する抗コリン作用性高負荷の影響について、傾向マッチコホート7,438例におけるACB負荷最小群(ACBスコア1以下)との比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・抗コリン作用性高負荷は、治療開始から最初の3ヵ月間で、認知症患者の約6.0%に認められた。
・抗コリン作用性高負荷群は対照群と比較し、治療変容(34.9% vs.32.1%)、せん妄(5.6% vs.3.6%)、死亡(16.8% vs.14.1%)の割合が有意に高かった。
・多変量Cox比例ハザード回帰分析では、最初の3ヵ月間でACB平均スコアが3超の集団には、治療変容リスク(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.02~1.24)、せん妄リスク(HR:1.52、95%CI:1.17~1.96)、死亡リスク(HR:1.23、95%CI:1.06~1.41)の有意な増加が認められた。
著者らは「抗コリン作用性高負荷は、コリンエステラーゼ阻害薬に対する治療反応に負の影響を及ぼし、ACB平均スコア3超が、認知症患者のせん妄および死亡の独立した予後因子であることが示唆された」としている。
■関連記事
認知症における抗コリン薬負荷と脳卒中や死亡リスクとの関連
注意が必要、高齢者への抗コリン作用
男性医師と女性医師によるコリンエステラーゼ阻害薬の処方実態比較
コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析
(鷹野 敦夫)