錐体外路症状(EPS)は、抗精神病薬で一般的にみられる副作用である。しかし、抗うつ薬治療後のEPSに関する症例報告もある。抗うつ薬がEPSを引き起こすメカニズムは十分にわかってはいないが、ドパミン作動性経路へのセロトニン入力が関与している可能性が高い。オーストリア・グラーツ医科大学のSabrina Morkl氏らは、抗うつ薬治療に関連するEPSについて評価を行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2019年8月7日号の報告。
抗うつ薬治療に関連するEPSを評価するため、精神科入院患者における重度の薬物反応をシステマティックに記録した多施設薬物監視プログラム(AMSP研究)のデータを用いて、レビューを行った。15症例を特定し、類似性の検出およびリスク因子の特徴付けを行った。
主な結果は以下のとおり。
・1994~2016年の間に、抗うつ薬治療後にEPSが発現した患者の報告は15症例であった。
・SSRI単独治療で7例、SSRI併用治療で6例のEPS発現が認められた。
・エスシタロプラム治療で最も多くEPSが認められた(5例)。
・最も一般的なEPSは、非定型のジスキネジアで6例、次いでアカシジアの4例であった。
・EPSの平均発症年齢は、54.93±17.9歳であった。
・EPSは、任意の投与量で発症し、男女とも同様の頻度で認められた。
著者らは「抗うつ薬治療によるEPSは、重要かつ珍しい副作用である。臨床医は、この悪影響に注意を払い、早期の警告サインを注意深く監視する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)