経口血糖降下薬にがん予防効果があるのか。米国・ロッキーマウンテン地方退役軍人医療センターのRobert L. Keith氏らは、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者や元喫煙者において、経口血糖降下薬ピオグリタゾンに肺がんの発症予防効果があるかを検討する第II相無作為化試験を行った。その結果、有意ではないがわずかに効果が期待できる所見や、特異的病変で組織学的改善が認められたという。著者は「さらなる試験を行い、反応性異形成の特徴を明らかにする必要がある」と述べている。これまでに、前臨床試験でチアゾリジン系薬が肺がんを予防することが、また同薬を服用する糖尿病患者で肺がんの割合が低いことが示唆されていた。Cancer Prevention Research誌2019年10月号掲載の報告。
研究グループは、喀痰細胞診で異型性または気管支鏡検査で異形成が認められた、肺がんの発症リスクが高い現喫煙者または元喫煙者において、経口ピオグリタゾンの肺がん発症予防効果を検討する、二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。
被験者は、試験登録時および6ヵ月の治療完遂後に気管支鏡検査を受け、生検組織スコアが記録された。
主要評価項目は、両群間の最も不良な生検スコア(Max)。副次評価項目は、異形成指標(DI)、平均スコア(Avg)の変化であった。また、炎症スコアも評価した。
主な結果は以下のとおり。
・試験には92例(ピオグリタゾン群47例、対照群45例)が参加し、76例が2回の気管支鏡検査を完了した(ピオグリタゾン群39例、対照群37例)。
・ベースラインで異形成が認められたのは現喫煙者で有意に多く、同被験者の64%が試験登録時に軽度以上の異形成を有していた。
・ピオグリタゾン治療を受けた元喫煙者は、わずかだがMax値の改善が認められた。一方、現喫煙者は、わずかだが増悪が認められた。
・Avg値とDI値については、治療群で統計的に有意な変化は認められなかったが、元喫煙者では、両値ともにわずかな低下が観察された。また、現喫煙者では両値についてごくわずかな変化が認められた。
・細胞増殖マーカーのKi-67値は、ベースラインで異形成が認められピオグリタゾン治療を受けた元喫煙者で、減少の傾向がみられた。
(ケアネット)