統合失調症患者では、抗精神病薬治療に対する反応が弱いまたは無反応で、陽性症状が持続するケースが見受けられる。米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、米国における治療抵抗性統合失調症(TRS)患者の人口統計、症状、治療歴、治療選択肢に影響を及ぼす要因について検討を行った。BMC Psychiatry誌2019年11月14日号の報告。
精神科医204人を対象にオンライン調査を行った。医師は、TRS患者2例および非TRS患者1例を自己選択し、患者情報を記入した。
主な結果は以下のとおり。
・統合失調症患者のうち、TRSの割合は29.5%と回答された。
・TRS患者408例は、非TRS患者204例と比較し、以下の特徴が認められた。
●失業率が高い(74.5% vs.45.1%、p<0.001)
●1回以上の入院歴(93.4% vs.74.0%、p<0.001)
●肥満を含む身体的併存疾患を有する(40.2% vs.23.5%、p<0.001)
●うつ病併存(38.7% vs.25.0%、p=0.001)
・TRS患者は精神症状がより頻繁かつ重度であり、社会的および機能的な影響が認められた。
・長期予後を改善させるために最も重要な要因は、陽性症状のうち幻覚、妄想を改善させることであった。
・TRSに対するクロザピン単独療法は15.9%であったが、これはTRSを治療する10種類の選択肢のうち、5番目であった。
・通常、クロザピン開始または抗精神病薬切り替え前に、現治療薬の増量または他の抗精神病薬の併用が行われていた。
・抗精神病薬の切り替え理由は、現治療薬の有効性不十分(71.4% vs.54.3%、p<0.001)および忍容性不十分(34.4% vs.38.4%、p=0.22)であった。
・TRSの治療切り替えにつながる症状は、幻覚行動の持続であった(63.9% vs.37.1%、p<0.001)。
著者らは「TRS患者は、一般的に抗精神病薬の増量や併用により対処されることが多く、唯一の承認薬であるクロザピン使用の優先順位は、5番目であった。抗精神病薬に治療反応が認められないTRS患者に対する新たな治療法が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)