統合失調症やうつ病の患者では、一般集団と比較し喫煙率が高い。英国・ブリストル大学のRobyn E. Wootton氏らは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)で特定された遺伝子変異を使用して、この因果関係を調べることのできるメンデルランダム化(MR)法を用いて検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。
統合失調症およびうつ病に対する喫煙の双方向の影響を調査するため、2つのサンプルにおけるMRを実施した。喫煙行動についてはGSCAN(GWAS and Sequencing Consortium of Alcohol and Nicotine use)コンソーシアムから喫煙開始のGWASを使用し、UK Biobankの46万2,690サンプルより生涯の喫煙行動に関する独自のGWASを実施した。肺がんなどのポジティブコントロールアウトカムを用いて検証した。統合失調症とうつ病には、PGC(Psychiatric Genomics Consortium)のGWASを使用した。
主な結果は以下のとおり。
・喫煙は、統合失調症(オッズ比[OR]:2.27、95%信頼区間[CI]:1.67~3.08、p<0.001)とうつ病(OR:1.99、95%CI:1.71~2.32、p<0.001)の両方のリスク因子であることが示唆された。
・この結果は、生涯の喫煙と喫煙開始の両方で、一貫して認められた。
・うつ病に対する遺伝傾向が喫煙を増加させる可能性が示唆されたが(β=0.091、95%CI:0.027~0.155、p=0.005)、統合失調症では明らかではなく(β=0.022、95%CI:0.005~0.038、p=0.009)、喫煙開始に対する影響は非常に弱かった。
著者らは「喫煙と統合失調症やうつ病の関連性は、少なくとも部分的に、喫煙の因果効果であることが示唆された。このことは、メンタルヘルスに対する喫煙の有害な結果をさらに示すものである」としている。
(鷹野 敦夫)