パニック症患者におけるアルコール依存症発症率に性差があるかについては、よくわかっていない。台湾・台北市立連合医院のHu-Ming Chang氏らは、この疑問を明らかにするため、調査を行った。Drug and Alcohol Dependence誌オンライン版2019年12月23日号の報告。
対象は、台湾全民健康保険研究データベースより抽出したパニック症患者9,480例。このうち、フォローアップ期間中にアルコール依存症を発症した患者は169例(男性:89例、女性:80例)であった。アルコール依存症発症の相対リスクを一般集団と比較するため、標準化罹患比(SIR:standardized incidence ratio)を用いた。ネステッドケースコントロール研究デザインに基づき、各ケースについてコントロール10例を選択した。アルコール依存症診断前の診療や精神医学的併存疾患を分析するため、条件付きロジスティック回帰を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・アルコール依存症発症のSIRは、男性で3.36、女性で6.29であった。
・アルコール依存症を発症した女性パニック症患者は、対照群よりも、外来受診が多かった。男性では、有意な差は認められなかった。
・アルコール依存症を発症した女性では、以下を併発する可能性が高かった。
●うつ病(調整リスク比[aRR]:2.94)
●人格障害(aRR:5.03)
●睡眠障害(aRR:1.72)
・アルコール依存症を発症した男性では、以下を併発する可能性が高かった。
●睡眠障害(aRR:1.85)
●その他の物質使用障害(aRR:3.08)
著者らは「パニック症患者は、一般集団と比較し、アルコール依存症発症リスクが高く、女性のほうがリスクが高かった。アルコール依存症発症前の精神医学的な併存疾患は、性差が認められたことから、予防的介入を検討する際には、性別を考慮する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)