治療継続やアドヒアランスは、精神疾患の有効なアウトカムと関連する。精神疾患患者の治療継続やアドヒアランスを改善するための最良の選択肢の1つとして、経口抗精神病薬よりも長時間作用型注射剤(LAI)が挙げられる。イタリア・ASL Pescara General HospitalのAlessia Romagnoli氏らは、抗精神病薬のアドヒアランス、治療継続、切り替えを評価し、実臨床におけるLAIと経口剤との比較を行った。Current Clinical Pharmacology誌オンライン版2020年3月9日号の報告。
2011年1月~2019年2月に、イタリア・ASL Pescara General Hospitalで抗精神病薬治療を受けたすべての患者を対象に、薬理学的非介入レトロスペクティブ観察研究を実施した。アドヒアランスは、受け取った1日量と使用した1日量の比で測定した。抗精神病薬治療の継続性は、治療開始と終了の日々の差として算出した。
主な結果は以下のとおり。
・アリピプラゾール治療患者840例、パリペリドン治療患者130例、リスペリドン治療患者925例を調査した。
・アドヒアランスは、以下のとおりであり、LAIは経口剤と比較し、有意に優れていた。
●アリピプラゾールLAI:0.89
●パリペリドンLAIとリスペリドンLAI:0.82
●アリピプラゾール経口剤:0.78
●パリペリドン経口剤:0.70
●リスペリドン経口剤:0.58
・治療3年間にわたる継続曲線では、統計学的に有意な差は認められなかった(p=0.3314)。
・製剤に基づく継続曲線でも、統計学的に有意な差は認められなかった。
・切り替えが行われた患者の割合は、アリピプラゾール治療患者7%、リスペリドン治療患者12%、パリペリドン治療患者28%であった。
著者らは「本研究のいずれの薬剤においても、経口剤よりもLAIのほうがアドヒアランスが良好であったが、治療継続については、統計学的に有意な差が認められなかった」としている。
(鷹野 敦夫)