統合失調症の治療において、電気けいれん療法(ECT)を支持する肯定的なエビデンスが増加しているが、これが実臨床の状況をどの程度反映しているかはよくわかっていない。トルコ・Erenkoy Training and Research Hospital for Psychiatry and Neurological DiseasesのNazife Gamze Usta Saglam氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬とECT増強療法の有効性を、自然主義的観察環境で調査した。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2020年6月15日号の報告。
対象は、急性増悪のために入院した統合失調症患者81例。抗精神病薬のみで治療された患者(AP群)とECT増強療法を併用した患者(ECT群)の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコアの変化を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・両群において、すべてのPANSSサブスケールの有意な減少が認められた。
・治療反応率は、ECT群95%(39例)、AP群75%(30例)であった(χ2=6.496、df=1、p=0.011)。
・急性増悪の統合失調症患者において、ECT群はAP群と比較し、治療反応(PANSSスコア25%以上減少)率が有意に上昇することが示唆された。
著者らは「急性期治療中の重度な統合失調症患者に対するECT増強療法の併用は、治療反応を高めることが示唆された。抗精神病薬治療後のPANSSスコア25%以上の減少率は、将来の症状再発時にECT増強療法によるベネフィットがもたらされる患者を特定するうえで役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)