うつ病に対する非定型抗精神病薬補助療法は、エビデンスで支持されている。うつ病では、性機能障害が一般的に認められるが、これが抗精神病薬の副作用により悪化する可能性がある。米国・バージニア大学のAnita H. Clayton氏らは、うつ病患者のプロラクチンと性機能に対するブレクスピプラゾールの影響について、評価を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2020年11、12月号の報告。
短期試験において、うつ病患者にブレクスピプラゾール1、2、3mgまたはプラセボの投与を行った。長期試験では、オープンラベル延長試験として、フレキシブルドーズにてブレクスピプラゾール0.5~3mg/日を投与した。プロラクチンのベースラインからの変化およびプロラクチン関連の治療による有害事象(TEAE)を評価した。性機能の評価には、Massachusetts General Hospital Sexual Functioning Questionnaireを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・短期試験におけるプロラクチンレベルのベースラインから6週目までの変化量の中央値は、以下のとおりであった。
【女性】
●ブレクスピプラゾール:5.99ng/mL
●プラセボ:-0.15ng/mL
【男性】
●ブレクスピプラゾール:1.61ng/mL
●プラセボ:-0.08ng/mL
・長期試験におけるプロラクチンレベルのベースラインから52週目までの変化量の中央値は、女性で0.27ng/mL、男性で0.27ng/mLであった。
・ベースライン時のプロラクチンレベルが正常上限値の1倍超の患者におけるプロラクチンレベルは、時間とともに減少する傾向が認められた。
・短期試験におけるブレクスピプラゾール治療によってプロラクチンレベルがベースライン後に正常上限値の3倍超となる患者の割合は、男女ともに低く(0~0.3%)、プラセボ群との差は認められなかった。なお、長期試験においてプロラクチンレベルがベースライン後に正常上限値の3倍超となる患者の割合は、女性で0.5%、男性で0.8%であった。
・プロラクチン関連TEAE発生率は、短期試験のブレクスピプラゾール群で3.1%、プラセボ群で0.7%、長期試験で3.1%であった。
・短期および長期試験では、男女ともにブレクスピプラゾール治療によるベースラインからの性機能改善が認められた。
・ブレクスピプラゾール群の女性では、以下の項目について、プラセボ群と比較し、有意な改善が認められた。
●性的関心:-0.19、95%信頼区間(CI):-0.33~-0.05、p=0.0074
●欲情:-0.17、95%CI:-0.30~-0.03、p=0.0154
●全体的な性的満足度:-0.16、95%CI:-0.30~-0.03、p=0.0184
著者らは「うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法は、プロラクチンレベルの変化が小さく、ベースライン後にプロラクチンレベルが上昇した患者の割合が低く、プロラクチン関連TEAE発生率が低く、性機能の適度な改善が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)