急性期精神科病棟における音楽療法と鎮静薬使用との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2021/04/20

 

 音楽療法は、患者の興奮状態を落ち着かせる手助けとなるだけでなく、全体的な頓服薬の投与を減少させる可能性がある。米国・SUNY Upstate Medical UniversityのTrevor Scudamore氏らは、精神科病棟での興奮のマネジメントにおいて薬理学的な介入の補助または代替として音楽療法が有効であるか、その実現可能性について、検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年3月6日号の報告。

 対象は172例。試験期間は、音楽なしの3ヵ月間と音楽のde-escalation(段階的縮小)オプションのある3ヵ月間で構成された6ヵ月間。音楽療法期間中、患者は好みのジャンルを選択し、最大30分間ワイヤレスヘッドホンの提供が行われた。興奮および不安症状に対して投与された頓服薬(経口、舌下、筋注)の数は、薬局の記録より収集した。患者および看護師より、音楽介入に関する自己報告調査を収集した。

 主な結果は以下のとおり。

・音楽療法実施期間中の頓服薬の週間平均投与量は、音楽なしの期間と比較し、ハロペリドールおよびオランザピンのいずれにおいても有意な減少が認められた。
 ●ハロペリドール:8.46±1.79(p<0.05)→5.00±1.44(p<0.05)
 ●オランザピン:9.69±2.32(p<0.05)→4.62±1.51(p<0.05)
・一方、ロラゼパムの投与量は、有意ではないものの増加傾向が認められた。
 ●ロラゼパム:3.23±1.09(p<0.05)→6.38±2.46(p<0.05)
・音楽療法に対する患者の回答は、96%が鎮静効果に同意するまたは強く同意するであった。
・看護師の回答では、音楽療法の簡便性に同意が得られ、56%が患者を落ち着かせるうえで役立つことに同意するであった。
・その他の探索的な結果として、平均入院期間の減少、隔離回数の減少が観察された。

 著者らは「音楽療法は、急性期精神科病棟における鎮静薬の頓服使用を減少させるうえで、重要な役割を果たす可能性がある。音楽療法が、その他の治療結果に及ぼす影響を調査するためには、さらなる研究が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)