双極性障害では、概日リズムの乱れと自殺リスクの高さとの関連が認められる。双極I型障害患者を対象としたこれまでの探索的研究では、冬と夏の日照量の変化と自殺企図歴との関連が示唆された。この結果をより多くのデータを用いて確認するため、ドイツ・ドレスデン工科大学のMichael Bauer氏らは、情報源を42%、収集国を25%増加させ、検討を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2021年9月1日号の報告。
さまざまな緯度の40ヵ国より得られた71件の情報源から収集したデータを分析した。分析対象には、双極I型障害患者4,876例が含まれており、これまでの研究よりも45%増加した。対象患者のうち、自殺企図歴を有する患者は1,496例(30.7%)であった。太陽からの光エネルギーが地表に当たる量を示す日照量のデータを、64ヵ国、479地点より収集した。
主な結果は以下のとおり。
・本分析により、同様の最良モデルを用いた探索的研究の結果が確認され、統計学的有意差がわずかに向上した。
・自殺企図歴と冬と夏の日照量の変化(冬の平均日照量/夏の平均日照量)との間に有意な逆相関が認められた。
・冬と夏の日照量の変化比率は、赤道付近で最大であり、夏の日照量と比較し冬の日照量が極端に少ない極地では最小となる。
・自殺企図リスクの増加に関連する他の因子は、アルコール乱用歴、薬物乱用歴、女性、若年出生コホートであった。
・熱帯地方の日照パターンに対応するため、日照量の変化比率を最少月間日照量/最大月間日照量と置き換えた場合でも、同様の結果が得られた。
・すべての推定係数において、p<0.01の統計学的に有意な差が認められた。
著者らは「冬と夏および月間最少と最大の日照量の変化は、双極I型障害患者の自殺企図リスクを高める可能性がある。双極性障害では、概日リズムの機能障害と自殺行動が高率で認められるため、概日リズムの同調に対する昼光や電灯の最適な役割についてより深い理解が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)