女性が輝く社会を目指す、PMSと片頭痛への対処法とは

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/15

 

 3月1日から8日までの「女性の健康」週間に先立ち、2022年2月24日、大塚製薬株式会社は女性の健康分野の疾患・健康啓発を目的としたオンラインメディアセミナーを開催した。セミナーでは西山 和枝氏(大塚製薬 女性の健康推進プロジェクト リーダー)、尾西 芳子氏(産婦人科医)、五十嵐 久佳氏(富士通クリニック 内科 頭痛外来)の3名が登壇し、月経前症候群(以下、PMS)および片頭痛をテーマに講演を行った。

女性の健康に対する社会の責務

 1人目の登壇者である西山氏は、「働く女性の健康意識調査について」と題した講演を行い、女性が抱える健康に関する悩みについて調査した結果を報告した。西山氏によると、働く女性の約半数はPMS症状および更年期症状を自覚しており、自覚がない人も含めると70~80%の女性に症状が現れているという。また、そうした症状によって昇進を諦めたり退職してしまったりする人も少なくない。一方で、PMS症状や更年期症状を会社内で相談できない場合も多く、PMS症状に対しては約60%、更年期症状に対しては約40%の女性が対策を企業に求めていることが明らかとなった。
 こうした結果から西山氏は「企業は働く女性たちが抱える課題を把握して、個人の対処だけに任せず『企業ごと』と捉えて対策を投じることが重要である。」と訴えた。

ヘルスリテラシーの向上がもたらすメリット

 2人目の登壇者である尾西氏は、「女性のヘルスケアとPMS」と題して、PMSが女性の生活に与える影響とヘルスリテラシーの重要性について解説した。

 PMSでは乳房の張りや頭痛といった身体症状や、抑うつやいらだちといった精神症状が現れるが、そうした症状が社会活動や学業、仕事に支障を来すかどうかが診断において重要となる。実際にPMS症状によって、家事や育児、仕事が手に付かなくなることに悩まされる女性も多いという。また、日本医療政策機構による2018年の調査では45%の女性がPMSや月経随伴症状によって元気な状態のときと比べて仕事のパフォーマンスが半分以下になると回答したという報告があるほか、月経随伴症状による社会経済的損失は年間で約6,800億円にも及ぶというデータもあり、PMSや月経随伴症状による労働損失は大きいとされている。そうした中、ヘルスリテラシーが向上することで、PMSや月経随伴症状、更年期症状が現れている際の仕事のパフォーマンスが改善することや、望んだ時期に妊娠ができた割合が高くなることが明らかになったという。ヘルスリテラシーを高めることで、女性自身のQOLの向上や人生計画の実現が可能となり、社会としても大きなメリットが見込まれると考えられる。

 PMSへの対処法としては、まずPMSを認識して自身の体調変化に気づき、生活習慣を見直すことが有効である。食事については、カフェインや甘いもの、塩分、アルコールは避け、タンパク質の豊富な食品や低GI食品、カリウムなど利尿作用のある成分が含まれている食品を積極的に摂ることが勧められるという。尾西氏は、「自分の持っている特徴や病気を知ることでライフプランニングが可能になっていく。婦人科は女性の身近なライフプランニングのパートナーと考えてほしい。」と強調した。

片頭痛を回避するためのポイントは?

 3人目の登壇者である五十嵐氏は、女性と片頭痛の関係について講演を行った。

 片頭痛の有病率は男性(3.6%)よりも女性(12.9%)のほうが高く、とくに20~40歳代の働き盛りの女性で高いことが知られる。女性の片頭痛では、月経に関連して痛みが起こることがあるという特徴がある。過去の報告では20~40歳代の女性の27%が月経時に頭痛を感じており、さらに月経に関連して頭痛が起こる場合は、その65%は片頭痛が原因であるという。月経に関連して重度の片頭痛が起こってしまうと、発作頓挫薬を使い過ぎてしまうことによる薬物乱用頭痛を引き起こし、治療抵抗性を示してQOLの低下に陥ってしまう恐れもある。そうした事態を回避するためには、まず頭痛の回数を減らすことを第一に考えることが必要であるという。片頭痛を減らすためには、患者自身が自分の頭痛の種類や片頭痛の誘発因子を理解し、頭痛がいつどのような状況で起こるのかを把握することが重要となる。

 片頭痛が疑われる症状としては、片側が時々痛む、動くことで痛みが増して家事や仕事に支障を来す、吐き気がする、光や音を煩わしく感じるといったことがある。こうした片頭痛の特徴的な症状を患者自身が理解することが、その後の適切な治療につながる。また、頭痛に悩む際はすぐに頭痛専門医に相談することも適切な治療を受けるためには重要となる。五十嵐氏は講演の最後に「女性が輝く社会のためには、頭痛の的確な診断と適切な治療が必要である。」として、頭痛治療の重要性を強調した。

(ケアネット 生島 智樹)