急性虫垂炎における環境的リスク因子のよくみられる因子の1つとして、夏に発症率が増加するという季節性が報告されている。しかし、すべての研究で示されていないため、米国・アイオワ大学のJacob E. Simmering氏らは、気候が異なる地域で数年間の気温の変化と急性虫垂炎の発症率を調査した。その結果、急性虫垂炎の発症率は季節だけでなく気温の上昇とも関連がみられ、5.56℃上昇するごとに発症率の増加が示された。さらに前の週の気温とも関連していた。JAMA Network Open誌2022年10月3日号に掲載。
本コホート研究では、MarketScan Commercial Claims and Encounters DatabaseおよびMedicare Supplemental and Coordination of Benefits Databaseの2001年1月1日~2017年12月31日の保険請求データを使用した。コホートには、MarketScan Commercial Claims and Encounters Databaseにデータを提供している米国の保険プランに加入している虫垂炎リスクのある人を含めた。地域の気象データは、Integrated Surface Databaseから大都市統計地域(MSA)の居住者について入手した。関連については、負の二項分布に基づく固定効果一般化線形モデルを用いて評価した。主要評価項目は、MSAの過去7日間の平均気温を独立変数とした年齢・性別ごとの所定都市における1日の虫垂炎患者数とした。
主な結果は以下のとおり。
・虫垂炎リスクのある4億5,072万3,744人年、虫垂炎患者68万9,917例を調査した。患者の平均年齢(SD)は35歳(18歳)、男性が34万7,473例(50.4%)だった。
・年齢・性別・曜日・年・MSAの調整後、気温が10.56℃以下では、虫垂炎発症率が5.56℃上昇ごとに1.3%増加(発生率比[IRR]:1.01、95%信頼区間[CI]:1.01~1.02)し、10.56℃を超える気温では5.56℃上昇ごとに2.9%増加(IRR:1.03、95%CI:1.03~1.03)した。
・予想気温より5.56℃より高かった週の翌日は、予想気温より0~0.56℃低かった週の翌日に比べて、虫垂炎発症率が3.3%(95%CI:1.0~5.7)増加した。
これらの結果から、虫垂炎発症率には季節性がみられ、発症率増加と温暖な気候の間に関連があることが示唆された。
(ケアネット 金沢 浩子)