肺がん・上部消化器がん、オランザピンが食欲・体重を改善/JCO 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2023/04/12 食欲減退は進行がん患者の30~80%にみられ、化学療法により悪化することがある。そこで、インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのLakshmi Sandhya氏らは、がん患者の化学療法に伴う消化器症状の改善に用いられるオランザピンについて、食欲亢進・体重増加効果を検討した。肺がん患者、上部消化器がん患者に対して、化学療法中に低用量のオランザピンを毎日投与することで、食欲亢進および体重増加が認められた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号に掲載された。 18歳以上で、未治療の進行または転移を有する胃がん患者(68例)、肺がん患者(43例)、肝がん・膵がん・胆道がん患者(13例)計124例を対象とした。対象患者を化学療法とともに低用量オランザピン(2.5g/日)を投与する群(オランザピン群)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、12週間投与した。両群とも、標準的な栄養評価と食事のアドバイスを受けた。主要評価項目は、5%以上の体重増加が認められた患者の割合と食欲改善であった。食欲については、VAS(visual analog scale)およびFAACT ACS(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy system of Quality-of-Life questionnaires Anorexia Cachexia subscale)で評価した。副次評価項目は、栄養状態の変化、QOL、化学療法の毒性であった。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者124例(年齢中央値:55歳[範囲:18~78]、オランザピン群63例、プラセボ群61例)のうち、112例(オランザピン群58例、プラセボ群54例)が解析可能であった。 ・5%以上の体重増加が認められた患者の割合は、プラセボ群が9%(5/54例)であったのに対し、オランザピン群は60%(35/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。 ・VASに基づく食欲改善が認められた患者の割合は、プラセボ群が13%(7/54例)であったのに対し、オランザピン群は43%(25/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。 ・FAACT ACSに基づく食欲改善(37点以上)が認められた患者の割合は、プラセボ群が4%(2/54例)であったのに対し、オランザピン群は22%(13/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p=0.004)。 ・オランザピン群では、栄養状態、QOLが良好であり、化学毒性も少なかった。 著者らは、「低用量オランザピンは、未治療患者におけるがん化学療法中の食欲と体重を改善する、安価かつ忍容性の高い治療である。低用量オランザピンには、栄養状態の改善やQOLの改善、化学療法の毒性の低減といった副次的なベネフィットもみられた」とまとめた。 (ケアネット 佐藤 亮) 原著論文はこちら Sandhya L, et al. J Clin Oncol. 2023 Mar 28. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 膵がん患者の悪液質、1次化学療法開始後3ヵ月で3割、1年で6割強に 医療一般 日本発エビデンス(2020/05/18) がん悪液質、外来で早期に気付くのがカギ!【非専門医のための緩和ケアTips】第25回 非専門医のための緩和ケアTips(2022/04/07) アナモレリン投与、日本人5,000例のリアルワールドデータ/日本臨床腫瘍学会 医療一般 日本発エビデンス(2023/04/03) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 小児がん、定期的な症状スクリーニングで苦痛な症状が改善/JAMA(2024/11/21) 米国民の幸福度、国内格差を人間開発指数で解析/Lancet(2024/11/21) エンパグリフロジン投与終了後もCKDの心・腎保護効果が持続、レガシー効果か?(解説:栗山哲氏)(2024/11/21) 心臓MRIによるLGEはLVEFより拡張型心筋症のリスクをより良く予測する(解説:佐田政隆氏)(2024/11/21) 肺動脈性肺高血圧症治療剤ユバンシ配合錠が発売/ヤンセン(2024/11/21) TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド(2024/11/21) ROS1陽性NSCLCへの新たな選択肢レポトレクチニブ、その特徴は?/BMS(2024/11/21) 低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発、リバーロキサバン18ヵ月vs. 6ヵ月(ONCO PE)/AHA2024(2024/11/21) 大腸がん検診、現時点では血液検査よりも大腸内視鏡検査が優れる(2024/11/21) うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、安定後は継続または中止?(2024/11/21) [ あわせて読みたい ] エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09) 「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08) 「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06) Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)