EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を用いた術後補助化学療法により、無病生存期間(DFS)の改善1,2)が認められており、最新の研究(ADAURA試験)では全生存期間(OS)の改善3)も認められているが、治療期間との関係は明らかになっていない。そこで、中国・Beijing Cancer HospitalのChao Lv氏らは、肺腺がん患者に対してEGFR-TKIのicotinibによる術後補助化学療法を1年実施した場合と、2年実施した場合の有効性・安全性を無作為化比較試験により検討した。その結果、icotinibの2年投与は1年投与と比較して、DFSのみならず、OSも改善した。本研究結果は、ESMO Open誌2023年6月20日号で報告された。
・試験デザイン:多施設共同海外第II相無作為化非盲検比較試験
・対象:18歳以上でStageII/IIIAのEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)肺腺がん患者のうち、完全切除可能であった109例
・試験群(2年群):icotinib 125mgを1日3回、2年間投与 54例
・対照群(1年群):icotinib 125mgを1日3回、1年間投与 55例
・評価項目
[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくDFS
[副次評価項目]OS、安全性
・データカットオフ日:2020年9月27日
主な結果は以下のとおり。
・主な患者背景は、年齢中央値59歳(範囲:32~76)、女性67%で、EGFR遺伝子変異の内訳は、ex19delが55%、L858Rが45%であった。また、StageIIが52%、StageIIIAが48%であった。
・データカットオフ時点の追跡期間中央値は44.1ヵ月であった。
・DFS中央値は、1年群が32.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.6~44.8)であったのに対し、2年群は48.9ヵ月(同:33.1~70.1)であり、2年群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.28~0.94、p=0.029)。
・治療期間終了後のDFS中央値は、1年群22.6ヵ月(95%CI:14.9~38.9)、2年群26.8ヵ月(同:14.5~46.1)であり、有意差は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.33~1.53、p=0.3832)。
・OSについて、2年群は1年群と比較して有意に改善した(HR:0.34、95%CI:0.13~0.95、p=0.0317)。
・5年OS率は、1年群が72%であったのに対し、2年群は88%であり、2年群が有意に改善した(p=0.032)。
・治療関連有害事象(TRAE)は、1年群75%(41例)、2年群67%(36例)に認められた。Grade3/4のTRAEは、1年群7%(4例)、2年群6%(3例)に認められた。治療に関連した死亡や間質性肺疾患の報告はなかった。
(ケアネット 佐藤 亮)