トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の胃がんにおける製造販売後調査(PMS)の初回投与後4ヵ月の中間解析の結果を第96回日本胃癌学会総会において近畿大学の川上 尚人氏が発表した。この発表はASCO-GI2024のアンコール発表である。
T-DXdは胃がん3次治療以降に使用される一方、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されている。日本においては、ILDのリスクを評価するため、すべてのT-DXd投与胃がん患者を対象に観察期間12ヵ月の多施設観察研究が行われている。日本胃癌学会では観察期間12ヵ月のうち最初の4ヵ月の中間成績が発表された。
主な結果は以下のとおり。
・2020年9月〜2021年12月にT-DXdが投与された全1,129例が登録され、そのうち1,074例が解析対象となった。
・患者の年齢中央値は70.0歳(65歳以上が71.7%)、77.3%が男性、組織型はIntestinalタイプが46.1%、Diffuseタイプが19.0%であった。
・T-DXdの第1サイクルの用量は6.4mg/日が79.4%を占めた。
・4ヵ月時点におけるT-DXdによる治療状況は治療中49.1%、中止50.9%であった。治療中止理由は原疾患の進行が71.3%と最も多かった。
・独立ILD判定委員会の評価により判定されたT-DXd関連ILDの発現割合は5.2%(56例)で、Grade≧3が1.5%(16例)、Grade5は0.7%(7例)であった。
・ILD発症患者(56例)のT-DXd投与については、中止が96.4%(54例)であった。
・ILD発症患者の転帰は、回復が48.2%(27例)、軽快が14.3%(8例)、回復したが後遺症ありが3.6%(2例)、未回復が16.1%(9例)、死亡が12.5%(7例)であった。
同解析は限られた期間のデータであるが、T-DXdが投与された全胃がん症例を含むため、日本におけるリアルワールドの使用実態を反映すると考えられる。
今回の発表は、観察期間12ヵ月のうち最初の4ヵ月の中間成績であり、今後さらに有用な解析情報が提供されることが期待される。
(ケアネット 細田 雅之)