日本人双極症外来患者におけるアルコール依存症合併率とその要因〜MUSUBI研究

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/24

 

 双極症は、躁状態とうつ状態の変動を特徴とする精神疾患であり、心理社会的な問題を引き起こす。再発を繰り返すことで認知機能が低下するため、継続的な治療により寛解状態を維持することが重要である。双極症患者は、アルコール依存症を合併することが多く、治療アドヒアランスの低下や自殺リスクの増加に影響を及ぼすことが知られている。しかし、日本人双極症外来患者におけるアルコール依存症のリアルワールドにおける臨床的要因はわかっていない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人双極症外来患者におけるアルコール依存症合併率を調査し、そのリスク因子を特定するため検討を行った。Frontiers in Psychiatry誌2024年11月7日号の報告。

 日本精神神経科診療所協会および日本臨床精神神経薬理学会の共同プロジェクトであるMUSUBI研究のデータを使用し、双極症患者2,392例を対象に、観察研究を実施した。アルコール依存症の有病率および双極症患者の社会人口統計学的特徴を明らかにしたのち、多変量解析を用いて、アルコール依存症のリスク因子を特定した。

 主な結果は以下のとおり。

・日本人双極症外来患者のアルコール依存症有病率は5.7%であった。
・男性の有病率は7.6%、女性の有病率は3.1%。
・二項ロジスティック回帰分析では、アルコール依存症と有意に関連していた因子は、双極症I型、躁状態、他の精神疾患の合併、男性、自殺念慮であることが明らかとなった。
・性別による層別化分析では、アルコール依存症は、男性よりも女性において自殺念慮との強い関連が示唆された。
・本研究の限界として、横断的研究デザインの観察研究であるため、因果関係を判断できない、入院患者の情報が含まれていない点が挙げられる。

 著者らは「日本人の双極症外来患者におけるアルコール依存症の合併率は、一般人口よりも高く、とくに男性でより高かった。さらに、アルコール依存症と自殺念慮との関連は、男性よりも女性において強かった。双極症外来患者では、躁状態とアルコール依存症との間に強い関連が示唆された。これらの結果は、アルコール依存症合併の双極症治療を行う臨床医にとって有用である。今後、よりロバストなエビデンスを得るためには、より大規模な集団を対象とした研究が求められる」としている。

(鷹野 敦夫)