多枝病変STEMI、完全血行再建術の最適なタイミングは?~ネットワークメタ解析/JACC

提供元:ケアネット

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公開日:2025/02/14

 

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、完全血行再建術(CR)は責任血管のみの治療より有益であることが、これまでの研究で報告されている。米国・エモリー大学の上山 紘生氏らの研究チームは、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析にて、多枝病変を有するSTEMI患者における最適な血行再建術のタイミングを検証した。その結果、CRは責任血管のみの治療より良好な転帰を示し、即時CRが段階的CRより有利な可能性が示された。Journal of the American College of Cardiology誌2025年1月7日号に掲載。

 本研究では、PubMedとEmbaseにて2024年7月までに登録されたSTEMIと多枝病変を有する患者における血行再建戦略を評価したランダム化試験を検索した。CRと責任血管のみの血行再建の比較試験、およびCRのタイミング(即時CRと段階的CR)の比較試験を、ネットワークメタ解析で分析した。また、血行再建術が即時的か段階的か、血管造影ガイド下か機能的ガイド下かに基づいて、4つのCR戦略で転帰が評価された。主要アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・1万5,902例の患者が登録された合計26件のランダム化試験が対象となった。平均追跡期間は25.2±15.7ヵ月であった。
・血管造影ガイド下または機能的ガイド下のいずれの場合も、CRは即時CRと段階的CRの両方で、責任血管のみの治療と比較してMACEが減少した(即時CRのリスク比[RR]:0.48[95%信頼区間[CI]:0.36~0.64]、段階的CRのRR:0.65[95%CI:0.52~0.82])。
・即時CRは、段階的CRと比較してMACEの減少と関連していた(RR:0.74[95%CI:0.56~0.97])。これはCRが血管造影ガイド下か機能的ガイド下でも認められた(血管造影ガイド下のRR:0.77[95%CI:0.61~0.99]、機能的ガイド下のRR:0.49[95%CI:0.27~0.89])。MACEの減少は、とくに心筋梗塞(MI)の減少によるものだった。
・ただし、すべてのMIと非手技的MI(non-procedural MI)の両方を報告した研究に解析を限定した場合、段階的CRと比較した即時CRのMI減少の有益性は、手技的MI(procedural MI)を除外すると減少した(手技的MIありのRR:0.44[95%CI:0.27~0.71]に対し、手技的MIなしのRR:0.65[95%CI:0.36~1.16])。

 本結果について著者らは、多枝病変を有するSTEMI患者では、血管造影ガイド、機能的ガイドにかかわらず、責任血管のみの治療と比較して、即時または段階的CRのほうが転帰が良好だったとまとめている。

(ケアネット 古賀 公子)