女性が運動をするなら朝が最適?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/29

 

 中年期以降の女性が健康のために運動をするなら、早朝から午前中に行うと良いかもしれない。その方が心血管イベントリスクをより抑制できる可能性を示唆するデータが報告された。ライデン大学医療センター(オランダ)のGali Albalak氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に11月14日に掲載された。なお、男性ではこのような傾向は見られないとのことだ。

 Albalak氏はこの研究結果の報告に際して、「まず基本的に伝えたいことは、いつ行ったとしても運動にはメリットがあるということだ」と述べ、運動そのものの意義を強調している。実際、公衆衛生に関する大半のガイドラインでは、運動の強度や頻度に関する推奨を掲げているものの、タイミングについては触れていない。Albalak氏らはそのような認識を基盤とした上で、概日リズム(1日24時間周期の生理活動)との関連から、運動を行うタイミングが健康上のメリットに影響を及ぼす可能性があるのではないかと考え、本研究を行った。

 研究には、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータが用いられた。解析対象は、7日間連続で3軸加速度計による身体活動量が把握されていた40~69歳の一般住民8万6,657人(平均年齢61.6±7.8歳、女性58%、BMI26.6±4.5)。加速度計の記録から、身体活動のピークが早朝の群(22.9%)、午前中の遅い時間帯の群(26.1%)、夕方以降の群(19.2%)、および最も一般的な日中の時間帯に平均的に活動している群(31.8%)という4群に分類。平均6年間追跡して、冠動脈疾患(CAD)や脳卒中の発生リスクを比較検討した。

 解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙習慣、降圧薬・脂質改善薬の服用、タウンゼント剥奪指数)を調整し、日中の時間帯に平均的に活動している最も一般的な群を基準として比較した。その結果、女性では身体活動のピークが早朝の群で、CADのリスクが22%有意に低く〔ハザード比(HR)0.78(95%信頼区間0.62~0.97)〕、午前中の遅い時間帯がピークの群では、CADのリスクが24%〔HR0.76(同0.63~0.92)〕、脳卒中のリスクは35%〔HR0.65(同0.47~0.89)〕有意に低いという結果が示された。しかし、男性では有意な関連は認められなかった。

 女性で認められた早朝や午前中に身体活動を行うことのメリットが、男性では見られないことの理由についてAlbalak氏は、「明確に説明できるデータは見つからなかった」と述べている。また、解釈上の注意点として、加速度計で把握された身体活動が、必ずしも運動を目的とするものとは限らないことを挙げ、「運動のタイミング次第で心血管疾患のリスクが変わると結論付けることは尚早」としている。

 この研究報告について、米テキサス大学サウスウエスタン医療センターのLona Sandon氏は、「驚くべきもので興味深く、かつ、やや不可解でもある」と評し、より深い理解のために、対象者の食事パターンに関する情報を加味した解析を行うことを提案している。同氏は、「栄養学の研究から、夜に食べるよりも朝に食べる方が、満腹感が強くなることが分かっている。また、朝と夜とでは代謝が異なり、この研究の結果にもその影響が現れている可能性がある」と考察している。さらに、朝の運動は夜の運動よりもストレスホルモンを低下させる傾向を示唆する研究もあるという。

 ただ、Sandon氏も、「どんな時間帯であっても、運動をしないよりした方が良い」と、Albalak氏と同じ言葉を口にしている。また、「通常の生活リズムの中で、可能な時間帯に運動をしてほしい。その上で、可能であれば朝のコーヒーブレイクの代わりに運動してみてはどうか」とSandon氏は提案している。

[2022年11月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら