血圧が160/100mmHg以上の重症高血圧の人は、1日に飲むコーヒーの量に気を付けた方が良いようだ。1日に2杯以上コーヒーを飲む重症高血圧の人では、心血管疾患(CVD)による死亡リスクがコーヒーを飲まない人の2倍以上である可能性が、新たな観察研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)疫学・生物統計学部の寺本将行氏らによる研究で、「Journal of the American Heart Association」に12月21日掲載された。
この研究では、日本人のがんリスクに関する大規模な多施設共同コホート研究であるJapan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC)のデータを用いて、重症の高血圧を持つ人でのコーヒーまたは緑茶の摂取とCVDによる死亡リスクとの関連が検討された。対象とされた1万8,609人(男性6,574人、女性1万2,035人)は、1988〜1990年の間にJACCに登録され(年齢は40〜79歳)、2009年まで追跡されていた。対象者は、正常血圧群(130/85mmHg未満)、正常高値血圧群(130〜139/85〜89mmHg)、I度高血圧群(140〜159/90〜99mmHg)、II度高血圧群(160〜179/100〜109mmHg)とIII度高血圧群(180/110mmHg以上)を合わせたもの(重症高血圧群)の4群に分類された。
中央値で18.9年にわたる追跡期間中に842人がCVDにより死亡していた。解析の結果、重症高血圧群では、コーヒーを摂取しない人を1とした場合のハザード比が、1日当たりのコーヒー摂取量が1杯未満で0.98(95%信頼区間0.67〜1.43)、1杯で0.74(同0.37〜1.46)であったのに対して、2杯以上では2.05(1.17〜3.59)となり、1日に2杯以上のコーヒー摂取によりCVDによる死亡リスクが有意に上昇することが示された。
こうした結果を受けて寺本氏は、「1日に2杯以上のコーヒー摂取が、重症高血圧患者ではCVDによる死亡リスクの増加につながっている可能性が示されたことに、われわれは驚いた。高血圧ではない人やI度高血圧の人では、このような関連は認められなかった」と驚きを表す。
これに対して、コーヒーと同様にカフェインを含む緑茶の摂取とCVDによる死亡リスクとの間には、高血圧の重症度にかかわりなく関連が認められなかった。この理由について寺本氏らは、「緑茶の有益な効果は、抗炎症作用と抗酸化作用を併せ持つ微量栄養素のポリフェノールにより、部分的に説明できる可能性がある」との見方を示している。
ただし、本研究は観察研究であり、重症高血圧患者でのコーヒーの摂取とCVDによる死亡との因果関係が示されたわけではないことを強調する。この点を踏まえた上で寺本氏は、「それでも、この研究結果は、重症の高血圧を有する人では、コーヒーを大量に摂取するべきではないという主張を裏付けるものだと言えるだろう」と話す。
この研究には関与していない、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)心臓病学チーフのGregory Marcus氏は、「この研究は観察研究であり、考慮されていない要因が他にもある可能性を認識しておくことが重要だ」と述べ、慎重な解釈を求めている。同氏は、「コーヒーは、非常に多くの人に摂取されている上に、良い影響も悪い影響も及ぼし得るので、研究テーマとしては興味深い。そればかりでなく、コーヒーが人体に及ぼす影響は、遺伝や行動、その他に曝露するものの影響により人それぞれである可能性も高い」と話す。
Marcus氏は、高血圧の人に、飲み物から受ける影響を最小限にするための方法として、「コーヒーの摂取が生活の質に関わる問題である人は、家庭で測った血圧の測定値を医療機関での測定値と比較して数値を調整した上で、自宅でコーヒーを飲んだ後に血圧が変動するかどうかを確認することだ。その際には、担当医との相談のもと、慎重に血圧を監視する必要がある」と助言している。
[2022年12月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら