治療抵抗性の有痛性糖尿病性神経障害(painful diabetic neuropathy;PDN)に対する脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)の有用性が報告された。患者の疼痛症状の改善に加えて神経学的評価の改善も認められたという。米アーカンソー大学のErika Petersen氏らが行った無作為化比較試験の報告であり、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月28日にオンラインで公開された。
米国の糖尿病患者数は約3700万人とされており、最大でその25%がPDNに罹患しているとされる。PDNに対してはさまざまな治療薬が臨床応用されているが、それらの治療に抵抗性を示す患者も少なくない。Petersen氏らは、そのような治療抵抗性PDN患者に対するSCSの安全性と有効性を検討した。
研究対象は、12カ月以上持続する症状があり、内科的治療への反応が十分でない下肢痛を有するPDN患者216人。疼痛の強さが10cmのビジュアルアナログスケールで5cm以上であり、HbA1cが10%以下であることも、適格条件として設定されていた。
無作為に1対1で二分し、1群は従来療法(conventional medical management;CMM)を継続するCMM群、他の1群はCMMにSCSを加えたSCS群に割り付けた。SCSには、痛みを伴う刺激が少ないとされる10kHzの高周波刺激デバイスを用いた。介入期間は24カ月。介入開始6カ月時点で、割り付けられた治療を継続したいか否かを患者に確認し、その希望次第で比較対照群に移行して良いというオプション付きクロスオーバーデザインで実施された。
6カ月後、SCS群の患者では平均76%の疼痛軽減が認められ、CMM群への移行を希望する患者はいなかった。一方、CMM群の患者では平均2%の疼痛悪化が見られ、93%がSCS群への移行を希望した。SCSによる鎮痛効果は持続的であり、24カ月後で平均80%の疼痛緩和が認められた。
臨床医の評価による神経学的所見については、6カ月時点でSCS群の患者の62%に改善が見られた。一方、CMM群で改善が見られた割合は3%だった。SCS群では神経学的所見の改善も持続的であり、24カ月後に66%が改善と判定された。
SCS施行に伴う有害事象としては、デバイス関連感染症が8件発生した。このうち5件はデバイス除去を要し、3件は除去に至らず治癒した。研究グループは、「糖尿病でない患者でのSCSデバイス関連感染症発生率は2.5~10%と報告されており、今回での研究の発生率もそれらの研究と同等と言える」としている。なお、SCSが無効との理由でデバイスが除去された患者はいなかった。
以上よりPetersen氏は、「われわれの研究は、PDNに対するSCSの安全性が許容できるものであり、疼痛を持続的に緩和可能であることを示している」と結論付け、また神経学的評価の改善も認められたことから、「この治療法は疾患修飾療法となり得るのではないか」と付け加えている。
なお、発表者のうち2人は、本研究に資金を提供したNevro Corp社に勤務している。
[2023年3月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら