RSウイルス感染症から赤ちゃんを守るための予防薬であるベイフォータス(一般名ニルセビマブ)の入院予防効果は90%であることが、リアルワールドデータの分析から明らかになった。これは、在胎35週以上で生まれた乳児を対象にニルセビマブの有効性を検討し、RSウイルス感染による医療処置の必要性を79%、入院の必要性を81%防ぐことを示した第3相臨床試験の結果を上回る。米疾病対策センター(CDC)の研究チームが実施したこの研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に3月7日掲載された。
CDCは、生まれて初めてRSウイルスシーズンを迎える生後8カ月未満の乳児に対するニルセビマブの単回投与を推奨している。RSウイルスは乳幼児の入院の主な原因であり、米国では毎年、5〜8万人の5歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症により入院している。
ニルセビマブはRSウイルス感染に対する免疫系の働きを特異的に増強する長時間作用型のモノクローナル抗体である。ニルセビマブが、生後24カ月未満の乳幼児でのRSウイルス関連下気道感染症の予防薬としてFDAにより承認されたのは2023年7月のことであり、そのため、今シーズンはその効果が証明される最初のシーズンとなる。なお、RSウイルスに対してはワクチンも承認されているが、投与対象は高齢者と妊婦である。
今回の研究でCDCの研究チームは、CDCの新ワクチンサーベイランスネットワーク(New Vaccine Surveillance Network;NVSN)から抽出した、2023年10月1日時点で生後8カ月未満であるか、同年10月1日以降に生まれた乳児のうち、2023年10月1日から2024年2月29日の間に急性呼吸器感染症により入院した699人を対象に、ニルセビマブの有効性を調査した。対象乳児のうち、407人(58%)はRSウイルス検査で陽性と判定され(症例群)、残る292人(42%)は陰性だった(対照群)。
症例群では6人(1%)、対照群では53人(18%)がニルセビマブの投与を受けていた。医学的に見てリスクの高い乳児は、健康な乳児に比べてニルセビマブを投与済みの者が多かった(46%対6%)。多変量ロジスティック回帰モデルによる解析から、RSウイルス感染症関連での入院に対するニルセビマブの予防効果は90%(95%信頼区間75〜96%)であることが示された。
研究チームは、「ニルセビマブなどのRSウイルス感染症の予防薬は、今でもRSウイルスから乳幼児を守るための最も重要な手段であることに変わりはない」とCDCのニュースリリースで述べている。
ただしCDCは、今回の研究でのサーベイランス期間が通常より短かったとし、10月から3月までの全RSウイルスシーズンを通して見ると、ニルセビマブの有効性は今回の結果より低くなる可能性があることに言及している。なぜなら、モノクローナル抗体の予防効果は通常、時間の経過とともに弱まるからである。
CDCは、ニルセビマブが妊娠中にRSウイルスワクチンを接種しなかった母親から生まれた乳児のために使われる薬であることを述べ、母親がRSウイルスワクチンを接種することで防御抗体が子どもに移行することを強調している。
[2024年3月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら