10代前半でスポーツを行っている子どもは、10代後半になった時点での学力が良好という有意な関連のあることが報告された。モントリオール大学(カナダ)のLinda Pagani氏らの研究によるもので、論文が「Children」に9月20日掲載され、同大学からニュースリリースが1月16日に発行された。構造化された競技に参加している子どもは性別を問わず、高校卒業資格を取得する割合が高く、また女子については審美系競技に参加している場合に学力も高くなるという関連も示されたという。
スポーツと学力との関連については既に複数の研究報告が存在するが、成績に良い影響を与えるとする結果もあれば、反対に成績の低下と関係しているという結果が混在している。また、これまでの研究の大半は横断研究であり、因果関係が不明。さらに、性別の違いが十分考慮されていないといった、解釈上の限界点があった。これを背景にPagani氏らは、カナダで行われている児童・青少年対象の縦断研究のデータを用いた解析を行った。
12歳の時点で何らかのスポーツを行っているか否かと、18歳時点での学業成績(自己申告に基づき満点を100%とした百分率で評価)、および、20歳までに高校を卒業またはそれと同等の資格を取得した割合との関連を検討した。解析対象者は2,775人で、男子が50.4%だった。なお、スポーツの種類は、構造化された競技(監督やコーチなどの指導の下で行われる競技)、審美系競技(ダンス、チアリーディング、および体操など)、構造化されていない身体活動(個人でスキルを磨くことの多い、スケートボード、サイクリングなど)という三つに分類した。
スポーツへの参加とその後の学力との関連の解析に際しては、家族構成、世帯収入、母親の教育歴・抑うつレベル、家族機能(家庭内の適切な役割分担や協力関係)、および、12歳時点での教師の判断による学力レベルなどの影響を統計学的に調整した。その結果、女子については複数の項目で有意な関連が認められ、男子は1項目のみが有意に関連していた。詳細は以下のとおり。
まず、12歳の時点で構造化された競技に参加していた女子は、スポーツを行っていなかった女子に比べて、18歳時点での学業成績が8.2%高く(P<0.01)、20歳時点で高校卒業資格を有している割合が7.1%高かった(P<0.05)。また、審美系競技に参加していた女子は、学業成績が22.8%高かった(P<0.001)。ただし、構造化されていない身体活動を行っていた女子は、学業成績が7.7%低かった(P<0.01)。一方、男子については、構造化された競技に参加していた場合において、20歳時点で高校卒業資格を有している割合が14.6%高かった(P<0.001)。
この結果について著者らは、「大人の監督下で行うことの多い団体競技に参加する子どもは、集団での行動、集中力の持続、リーダーシップなど、さまざまな重要なスキルを身に付けていき、それが学力にも生きてくるのではないか」と述べている。ただ、全ての子どもがスポーツ参加の恩恵を受けられるわけではない。本研究では、世帯収入の低さなどの環境要因が、子どものスポーツ参加の妨げとなっているという課題も示されている。
[2025年1月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら