経橈骨動脈PCIの被曝量、経大腿動脈よりわずかに多い/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/15

 

 診断冠動脈造影と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う際、経橈骨動脈アクセスのほうが経大腿動脈アクセスに比べ、透視時間やカーマ面積量は大きいことが示された。カナダ・Laval UniversityのGuillaume Plourde氏らが行った、システマティック・レビューとメタ解析の結果、明らかになった。経橈骨動脈アクセスによる心臓カテーテル術は、経大腿動脈アクセスに比べ、出血や血管合併症が少ないことが判明している。同グループは、今回の結果について、経橈骨動脈アクセスは経大腿動脈アクセスに比べ被曝量がわずかに多いが、透視時間は短縮傾向にあり、経橈骨動脈アクセスの臨床的効用を上回ることはないだろうと結論付けている。Lancet誌オンライン版2015年9月24日号掲載の報告より。

1989~2014年までのRCTをレビュー
 研究グループは、PubMedやEmbase、Cochrane Libraryデータベースから、1989年1月~2014年6月にかけて発表された、動脈アクセス部位と放射パラメータに関する無作為化試験について、システマティック・レビューを行った。経橈骨動脈アクセスと経大腿動脈アクセスによる、診断冠動脈造影とPCIの被曝量を比較した。

 主要放射線アウトカムは、透視時間とカーマ面積量で、メタ回帰分析を行って経時的変化を求めた。副次アウトカムは、術者の放射線被曝量と処置時間だった。

透視時間は過去20年で75%短縮
 24の無作為化試験、被験者総数1万9,328例について分析を行った。その結果、経橈骨動脈アクセスは経大腿動脈アクセスに比べ、透視時間増加と有意な関連が認められた。(診断冠動脈造影の透視時間の加重平均差[WMD]:1.04分、95%信頼区間[CI]:0.84~1.24、p<0.0001、PCIの同WMD:1.15分、同:0.96~1.33、p<0.0001)。

 また、経橈骨動脈アクセスは経大腿動脈アクセスに比べ、カーマ面積量も有意に多かった(診断冠動脈造影WMD:1.72 Gy-cm2、95%CI:-0.10~3.55、p=0.06、PCIのWMD:0.55 Gy-cm2、同:0.08~1.02、p=0.02)。

 PCIの術者被曝量は、基本防御で経大腿動脈アクセスが平均74μSvに対し、経橈骨動脈アクセスでは平均107μSvと多かった。透視時間は1996年の2分から2014年の30秒へと、過去20年間で75%短縮した(p<0.0001)。なお、これらの差やエフェクトサイズについて、観察試験と無作為化試験による乖離はなかった。

(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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コメンテーター : 藤本 肇( ふじもと はじめ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 循環器内科 部長

J-CLEAR評議員