集中治療室(ICU)に入室し長期間の人工呼吸器装着が必要となったクリティカルな患者の家族に対して、緩和ケア専門医による面談などの介入は、ICUスタッフによるルーチンの面談などと比べて、不安やうつを軽減せず、むしろ外傷後ストレス障害(PTSD)症状を増す可能性があることが、米国・ノースカロライナ大学のShannon S. Carson氏らが行った多施設共同無作為化試験の結果、示された。JAMA誌2016年7月5日号掲載の報告。
ルーチンのICUスタッフによる介入と比較
研究グループは、クリティカルな患者家族への緩和ケア専門医による情報提供やエモーショナルサポートが、家族の不安やうつ症状を改善するかを検討した。2010年10月~2014年11月に、米国内4つのICUで、7日間以上の人工呼吸器装着が必要となった成人(21歳以上)患者を適格とし、介入群と対照群の2群に無作為化。代理意思決定を担う患者家族を試験に登録し、割り付けを知らせず主要アウトカムについて評価を行った。
介入群(患者130人、患者家族184人)には、緩和ケア専門医による2回以上の構造化家族面談と小冊子を提供、対照群(126人、181人)には、小冊子提供とICUチームによるルーチンの家族面談が行われた。
主要アウトカムは、3ヵ月のフォローアップインタビューで評価した患者家族のHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)症状スコア(範囲0[最も良好]~42[最も不良])で、臨床的に意義のある最小スコア差は1.5と定義した。副次アウトカムは、Impact of Events Scale-Revised(IES-R)スコア(範囲0[最も良好]~88[最も不良])で評価した家族のPTSD症状、また、患者の意向についての話し合い、入院期間、90日生存率などであった。
不安・うつを軽減せず、むしろPTSD症状を有意に増大
患者家族(両群計365人、平均年齢51歳、女性が71%)のうち、試験を完了(3ヵ月のフォローアップインタビュー)したのは312人(介入群163人、対照群149人)であった。
3ヵ月時点で、患者家族の不安およびうつ症状について両群間で有意差は認められなかった(介入群 vs.対照群の補正後平均HADSスコア;12.2 vs.11.4、群間差:0.8、95%信頼区間[CI]:-0.9~2.6、p=0.34)。
一方、PTSD症状スコアは、対照群が有意に高かった(補正後平均IES-Rスコア;25.9 vs.21.3、群間差:4.60、95%CI:0.01~9.10、p=0.0495)。
患者意向の話し合いについて有意差はみられなかった(75% vs.83%、オッズ比[OR]:0.63、95%CI:0.34~1.16、p=0.14)。また、入院期間中央値(19日 vs.23日、両群差:-4日、95%CI:-6~3日、p=0.51)、90日生存率(HR:0.95、95%CI:0.65~1.38、p=0.96)も、有意な差はなかった。
著者は、「結果は、長期のクリティカルケアが必要となったすべての患者家族に対して、緩和ケア専門医によるケアのゴールについての話し合いをルーチンまたは必須なものとして行うことを支持しないものであった」とまとめている。