多発性骨髄腫の1次治療、ボルテゾミブ追加で予後改善/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/01/17

 

 新規診断多発性骨髄腫患者の治療において、プロテアソーム阻害薬(PI)と免疫調節薬(IM)を含む3剤併用療法は、従来の標準治療に比べ予後を改善し、リスクベネフィット・プロファイルも許容範囲内であることが、米国・Cedars-Sinai Samuel OschinがんセンターのBrian G M Durie氏らが実施したSWOG S0777試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年12月22日号に掲載された。米国の新規診断多発性骨髄腫の標準治療は、レナリドミド+デキサメタゾンである。PIであるボルテゾミブとIMであるレナリドミドは、異なる作用機序による相乗効果が確認され、デキサメタゾンとの3剤併用療法の第I/II相試験では、未治療の多発性骨髄腫患者において高い有効性と良好な耐用性が報告されている。

ボルテゾミブの上乗せ効果を無作為化試験で評価
 SWOG S0777は、自家造血幹細胞移植に同意していない未治療の多発性骨髄腫患者の治療において、標準治療へのボルテゾミブの上乗せ効果を評価する非盲検無作為化第III相試験(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、測定可能病変(血清遊離軽鎖の評価で測定)を有し、臓器障害(CRAB基準:高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変)がみられ、全身状態(ECOG PS)が0~3、ヘモグロビン濃度≧9g/dL、好中球絶対数(ANC)≧1×103/mm3、血小板数≧8万/mm3の患者であった。

 被験者は、初回治療としてボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)を投与する群またはレナリドミド+デキサメタゾン(Rd)を投与する群に無作為に割り付けられた。VRd群は8サイクル(1サイクル21日)、Rd群は6サイクル(1サイクル28日)の治療が行われた。

 2008年4月~2012年2月に、139施設に525例が登録され、VRd群に264例、Rd群には261例が割り付けられた。VRd群では有効性は242例、毒性は241例、奏効は216例で、Rd群ではそれぞれ229例、226例、214例で解析が可能であった。

PFS、OSが有意に改善
 ベースラインの背景因子は、Rd群で女性が多く(37 vs.47%)、年齢が高かった(65歳以上の割合:38 vs.48%)が、これら以外は両群でバランスがとれていた。

 主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間中央値は、VRd群が43ヵ月であり、Rd群の30ヵ月に比べ有意に優れた(層別化ハザード比[HR]:0.712、96%信頼区間[CI]:0.56~0.906、片側検定p=0.0018)。

 副次評価項目である全生存(OS)期間中央値も、VRd群が75ヵ月と、Rd群の64ヵ月に比し有意に良好であった(HR:0.709、95%CI:0.524~0.959、両側検定p=0.025)。

 全奏効率(部分奏効[PR]以上)は、VRd群が81.5%(176/216例)、Rd群は71.5%(153/214例)であった(p=0.02)。このうち完全奏効(CR)以上は、それぞれ15.7%(34/216例)、8.4%(18/214例)であった。奏効期間中央値は、VRd群が52ヵ月、Rd群は38ヵ月であった(HR:0.695、両側検定p=0.0133)。

 Grade 3以上の有害事象の発現率は、VRd群が82%(198/241例)、Rd群は75%(169/226例)であった。予想されたとおり、Grade 3以上の神経毒性はVRd群のほうが高頻度であった(33 vs.11%、p<0.0001)。有害事象による治療中止の割合は、VRd群が23%(55例)、Rd群は10%(22例)であった。2次原発がんは、20例に認められた(両群10例ずつ)。治療関連死は両群ともみられなかった。

 著者は、「これらの知見は、3剤併用療法による1次治療の意思決定に、重要な情報をもたらす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)