入院前、受傷早期の輸血が負傷兵を救う/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/11/07

 

 入院前または受傷後早期の輸血は負傷兵の生存を改善することが、戦闘に参加し医療搬送(MEDEVAC)で救出された米兵を対象とした検討で示された。米国・Defense Center of Excellence for TraumaのStacy A. Shackelford氏らが、JAMA誌2017年10月24日号で報告した。外傷治療における病院到着前の血液製剤輸注は、エビデンスの質が低く、医療費の問題があるため議論が続いている。2012年以降、米軍のMEDEVAC班の輸血技能が継続的に発展し、初回輸血のタイミングや場所に重点を置いたコホート研究が可能になったという。

入院前輸血と生存の関連を後ろ向きに検討
 研究グループは、入院前輸血の導入および初回輸血までの期間と、外傷患者の生存の関連をレトロスペクティブに検討するコホート研究を行った(米国国防総省などの助成による)。

 対象は、2012年4月1日~2015年8月7日の期間にアフガニスタンの戦闘で負傷した米兵であった。生存した状態でMEDEVACによって救出され、1)外傷による膝または肘の上部での四肢の切断、2)収縮期血圧<90mmHgまたは心拍数>120回/分で定義されるショックのいずれかを満たす患者を解析に含めた。

 受傷した地点から病院の途中での入院前輸血(赤血球、血漿、これら両方)の導入、および輸血場所(病院到着前、入院中)を問わずMEDEVACによる救出から初回輸血までの期間を検討した。入院前輸血患者と、輸血が遅延または行われなかった非入院前輸血(非曝露)患者の比較を行った。

 主要アウトカムは2つで、MEDEVAC救出から24時間および30日時の死亡率とした。外傷の重症度に基づく試験群のバランスを取るために、外傷の原因(銃撃 vs.爆発)、入院前のショックの有無、四肢切断の重症度、頭部外傷の重症度、胴部出血で、非入院前輸血患者を入院前輸血患者とマッチさせた。

入院前か否かを問わないと、救出から16分以降は差がない
 解析の対象となった502例の年齢中央値は25歳(四分位範囲:22~29)、98%が男性であった。入院前輸血群は55例、非入院前輸血群は447例だった。入院前輸血群は非入院前輸血群に比べ傷害の重症度が高かった。

 MEDEVAC救出後24時間以内の死亡率は、入院前輸血群が5%(3例)、非入院前輸血群は19%(85例)と、有意な差が認められた(群間差:-14%、95%信頼区間[CI]:-21~-6%、p=0.01)。30日死亡率は、それぞれ11%(6例)、23%(102例)であり、入院前輸血群で有意に良好だった(群間差:-12%、95%CI:-21~-2%、p=0.04)。

 マッチングを行った400例のうち共変量データが完全であった386例(97%)の解析では、24時間後までに入院前輸血群の54例中3例、非入院前輸血群の332例中67例が死亡し、入院前輸血と関連した死亡の補正後ハザード比(HR)は0.26(95%CI:0.08~0.84、p=0.02)と、入院前輸血により生存が有意に改善した。同様に、30日後までの死亡者はそれぞれ6例、76例であり、補正後HRは0.39(95%CI:0.16~0.92、p=0.03)であった。

 受傷からMEDEVAC救出までの期間中央値は36分であった。初回輸血の場所(病院到着前、入院中)を問わない解析では、MEDEVAC救出から15分以内に輸血が行われた62例と、輸血が遅れた(16分以降に輸血した)または輸血しなかった324例の比較において、24時間以内の死亡はそれぞれ2例、68例で、有意な差が認められた(補正後HR:0.17、95%CI:0.04~0.73、p=0.02)。これに対し、MEDEVAC救出から16~20分に輸血した33例と、21分以降に輸血または輸血しなかった278例の比較では、24時間以内の死亡はそれぞれ10例、46例であり、有意差が消失した(補正後HR:0.94、95%CI:0.41~2.17、p=0.89)ことから、救出後早期の輸血の重要性が示唆された。

 著者は、「これらの知見は受傷時の入院前輸血の有用性を支持するものだが、試験の時間枠では米国国防長官によって義務付けられた“golden hour rule”が働いているなどの理由により、あくまで軍の外傷システムの範囲内で解釈すべきである」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)