小児喘息の悪化初期に吸入ステロイド5倍量、その結果は?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2018/03/16

 

 小児の軽・中等症持続型喘息患者において、吸入ステロイドによる維持療法中に喘息コントロール悪化の初期徴候を認めた場合、吸入ステロイドを5倍量としても重症喘息増悪の発生率は低下せず、その他の喘息に関する評価項目の改善も確認されなかった。米国・ウィスコンシン大学のDaniel J. Jackson氏らが、STICS(Step Up Yellow Zone Inhaled Corticosteroids to Prevent Exacerbations)試験の結果を報告した。吸入ステロイドなどの喘息管理薬を定期的に使用していても、しばしば喘息増悪が起こり、臨床医は、喘息コントロール悪化の初期徴候を認めると吸入ステロイドを増量することが一般的である。しかし、この戦略の小児に対する安全性/有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2018年3月8日号掲載の報告。

小児喘息患者約250例で、低用量と5倍量の投与を比較
 STICS試験は、過去1年間に全身性ステロイド薬による治療を要した喘息増悪歴が1回以上ある、5~11歳の軽・中等症持続型喘息患者254例を対象とした。

 試験は4週間の導入期と48週間の治療期からなり、導入期には全員に非盲検下でフルチカゾンプロピオン酸エステルの低用量(44μg/吸入)を投与。治療期は非盲検維持期として低用量を全員に投与しつつ、“7日間のイエローゾーン(喘息コントロール悪化の初期徴候を認める期間)”を認めた場合に、低用量投与を継続する群と5倍量(220μg/吸入)を投与する群(高用量群)に、盲検下で無作為に被験者を割り付けた。投与はいずれも1回2吸入、1日2回を投与した。

 喘息コントロール悪化の初期徴候は、アルブテロール(サルブタモール)のレスキュー投与を6時間に2回(4吸入)、24時間に3回(6吸入)、またはアルブテロールのレスキュー投与を要した喘息による夜間覚醒、のいずれかの発生とした。

 主要評価項目は、全身性ステロイド薬による治療を要した重症喘息発作発生率であった。

高用量群と低用量群で重症喘息発作発生率に有意差なし
 主要評価項目の重症喘息発作発生率は、高用量群0.48回/年、低用量群0.37回/年であり、両群間で有意差は確認されなかった(相対比:1.3、95%CI:0.8~2.1、p=0.30)。

 初回増悪までの期間、治療失敗率、症状スコア、およびイエローゾーンでのアルブテロール使用についても、両群間に有意差はなかった。ステロイド総曝露量は、低用量群より高用量群で16%高値であった。

 高用量群と低用量群で、身長の伸びの差が-0.23cm/年(p=0.06)認められた。

 著者は研究の限界として、予想よりもイエローゾーンや全身性ステロイド薬による治療を受けた喘息発作発生率が少なかったことなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)