急性心筋梗塞による入院患者へのハロペリドール投与開始から7日以内の死亡リスクは、非定型抗精神病薬に比べわずかに高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のYoonyoung Park氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年3月28日号に掲載された。外来患者や介護施設入居者の研究では、定型抗精神病薬は非定型抗精神病薬に比べ、死亡リスクが高いことが一貫して示唆されている。一方、抗精神病薬を入院患者のせん妄の症状管理に使用した場合の相対的な安全性に関するエビデンスは、ほとんどないという。
全米700以上の病院のデータを用いたコホート研究
研究グループは、心筋梗塞による入院患者におけるハロペリドールの院内死亡リスクを、非定型抗精神病薬と比較するコホート研究を行った(ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院などの助成による)。
解析には、全米にある700以上の病院の患者データを用いた。2003~14年の期間に、急性心筋梗塞の初回診断を受け、入院中に経口ハロペリドールまたは経口非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン、リスペリドン)の投与を開始した18歳以上の患者6,578例を対象とした。
主要アウトカムは、治療開始からフォローアップ期間7日までの死亡であった。
死亡リスクは最初の4日間で最も上昇
6,578例(平均年齢75.2歳)のうち、ハロペリドール群が1,668例(25.4%)、非定型抗精神病薬群は4,910例(74.6%)であった。入院から投与開始までの平均期間(5.3 vs.5.6日)と、入院期間(12.5 vs.13.6日)はほぼ同様であったが、平均投与期間はハロペリドール群が短かった(2.4 vs.3.9日)。
1対1傾向スコアマッチング法で交絡を調整し、マッチさせたコホートでintention to treat解析を行ったところ、投与開始から7日以内の100人日当たりの絶対死亡率は、ハロペリドール群が1.7(129例が死亡)、非定型抗精神病薬群は1.1(92例が死亡)であり、退院によるフォローアップ不能例を考慮すると、7日時の生存率は、それぞれ0.93、0.94であった。補正前および補正後の死亡のハザード比[HR]は、それぞれ1.51(95%信頼区間[CI]:1.22~1.85)、1.50(1.14~1.96)だった。
リスクの上昇度は投与開始から最初の4日間が最も大きく、5日目には明確ではなくなった(HR:1.12、0.79~1.59)。7日時のas-treated解析では、補正前および補正後HRは、それぞれ1.90(1.43~2.53)、1.93(1.34~2.76)だった。
著者は、「ハロペリドールは、長い間、入院患者の不穏やその関連症状の管理に使用されてきたが、重度の不穏で未承認の抗精神病薬を要する急性心筋梗塞の高齢患者では、非定型抗精神病薬のほうが害が少ない可能性が示唆される」とし、「残余交絡は完全には排除できないものの、この知見は心合併症を伴う入院患者にハロペリドールを使用する際、考慮に値する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)