交替制の夜勤労働と不健康な生活様式はいずれも2型糖尿病のリスクと関連し、これらが併存すると、個々の要因を単独に有する場合に比べリスクが相加的に高くなることが、米国の女性看護師を対象とする調査の解析で示された。中国・華中科技大学のZhilei Shan氏らが、BMJ誌2018年11月21日号で報告した。交替制の夜勤労働者は不健康な生活様式の頻度が高いとする報告は多い。また、交替制夜勤労働と不健康な生活様式は、いずれも2型糖尿病のリスクを増大させることが知られている。
NHSとNHS IIのデータを用いた前向きコホート研究
研究グループは、交替制夜勤労働の期間および生活様式の因子と、2型糖尿病リスクの複合的な関連を評価し、夜勤労働単独、生活様式単独、およびこれらの交互作用を定量的に検討する前向きコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。
米国の「看護師健康調査(Nurses' Health Study[NHS]:1988~2012年)」および「看護師健康調査II(NHS II:1991~2013年)」に参加した女性看護師のうち、ベースライン時に2型糖尿病、心血管疾患、がんに罹患していない14万3,410例を対象とした。
交替制夜勤労働は、日勤および準夜勤に加えて、当該月に3回以上の夜勤に就いた場合と定義した。不健康な生活様式の因子は、現喫煙、中~高強度の身体活動が1日に30分未満、代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index[AHEI]:0~10点、10点は1日の推奨サービング数の順守を示す)のスコアが低値(下位の5分の3まで)の食事、BMI≧25であった。
主要アウトカムは2型糖尿病の発症とした。2型糖尿病は、参加者の自己報告により同定し、補足的な質問票で確定した。夜勤期間は1~5年、5~9年、10年以上、なしに分け、不健康な生活様式は0~1項目、2項目、3項目以上に分けて解析を行った。
リスクの約7割が不健康な生活様式に起因
夜勤の経験のない女性と比較して、夜勤の年数が増えるに従って、現喫煙が多くなり、BMIが増加した。また、夜勤期間が長くなるに伴い、NHSの参加者は年齢が高くなり、NHS IIの参加者は非婚者および単身者が多くなった。22~24年のフォローアップ期間に、1万915人が2型糖尿病を発症した。
夜勤経験のない女性に比べ、夜勤期間が長期になるに従って、2型糖尿病の多変量補正ハザード比(HR)は上昇することが認められた(傾向のp<0.001)。また、不健康な生活様式が0~1項目の場合に比し、3項目以上の参加者は、2型糖尿病のリスクが5倍以上であった(補正後HR:5.39、3.65~7.95)。さらに、夜勤経験がなく、かつ不健康な生活様式が0~1の群に比べ、夜勤が10年以上かつ不健康な生活様式が3項目以上の群における2型糖尿病の多変量補正後HRは7.04(5.29~9.37)だった。
夜勤期間が5年長くなるごとの2型糖尿病の多変量補正後HRは1.31(95%CI:1.19~1.44)、不健康な生活様式の因子が1つ増えるごとの補正後HRは2.30(1.88~2.83)であった。これら2つの複合作用による2型糖尿病の補正後HRは2.83(2.15~3.73)であり、相加的な交互作用が認められ(交互作用のp<0.001)、交互作用に起因する過剰なリスクは0.20(0.09~0.48)であった。
2型糖尿病の発症に影響を及ぼす複合的関連のリスクの割合は、夜勤単独が17.1%(14.0~20.8%)、不健康な生活様式単独は71.2%(66.9~75.8%)であり、これらの相加的な交互作用に起因するリスクの割合は11.3%(7.3~17.3%)だった。
著者は、「2型糖尿病の多くは、健康的な生活様式を順守することで予防可能であり、交替制夜勤労働者では、より大きな便益が得られる可能性が示唆される」としている。
(医学ライター 菅野 守)