心筋梗塞疑いへの高感度トロポニン検査値、どう読み解く?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/04

 

 心筋梗塞を示唆する症状を呈する救急受診患者への高感度トロポニン検査のデータから、より正確に診断・予後情報を読み解くためのリスク評価ツールが、ドイツ・ハンブルグ大学心臓センターのJohannes T. Neumann氏らにより開発された。同検査データは、心筋梗塞である確率と、その後30日間のアウトカムの推定に役立つ可能性が示されていた。今回開発されたリスク評価ツール(「救急受診時[1回目]の高感度トロポニンIまたはトロポニンT値」「その後2回目採血までの同値の動的変化値」「2回の採血の間隔」を統合)は、それら診断・予後の推定に有用であることが示されたという。NEJM誌2019年6月27日号掲載の報告。

診断・予後能が高い検査値・変化値・検査間隔の組み合わせを探る
 研究グループは、心筋梗塞を示唆する症状を呈する救急部門の受診患者を登録した15の国際コホートにおいて、受診時(1回目)およびその後早期または後期(2回目)に、高感度トロポニンI値または高感度トロポニンT値を測定した。複合的な高感度トロポニンカットオフ値の組み合わせについて、開発・検証デザイン法を用いて診断および予後のパフォーマンスを評価した。

 これらのデータを基に、指標の心筋梗塞およびその後30日間の心筋梗塞の再発または死亡のリスクを推定するリスク評価ツールを開発した。

6ng/L未満、45~120分後の絶対変化4ng/L未満なら、99.5%心筋梗塞ではない
 2万2,651例(開発データセット群9,604例、検証データセット群1万3,047例)における、心筋梗塞の有病率は15.3%であった。

 1回目の高感度トロポニン検査値が低値で、2回目までの同値の絶対変化が小さい場合は、心筋梗塞である確率は低く、心血管イベントの短期的リスクは低いことと関連していた。たとえば、高感度トロポニンI値6ng/L未満、2回目採血が45~120分後(早期群)で絶対変化は4ng/L未満の場合、心筋梗塞の陰性適中率は99.5%であり、その後30日間の心筋梗塞または死亡のリスクは0.2%であった。なお、全被験者のうち56.5%が、低リスク群に分類された。

 これらの所見は、拡大検証データセットにおいても確認された。

(ケアネット)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 副院長

J-CLEAR評議員