無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、追跡期間中の手術死亡または心血管死(複合エンドポイント)の発生率は、早期に弁置換術を施行した患者のほうが保存的治療を行った患者よりも有意に低いことが示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らが、多施設共同試験「RECOVERY試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症患者の3分の1から2分の1は診断時に無症状であるが、こうした患者における手術の時期と適応については依然として議論の余地があった。NEJM誌オンライン版2019年11月16日号掲載の報告。
手術死亡と心血管死の複合エンドポイントを比較
RECOVERY試験(Randomized Comparison of Early Surgery versus Conventional Treatment in Very Severe Aortic Stenosis trial)は、2010年7月~2015年4月の期間に、無症候性の超重症大動脈弁狭窄症(大動脈弁口面積≦0.75cm
2で、大動脈弁血流速度≧4.5m/秒または平均圧較差≧50mmHgのいずれか)患者145例を、早期手術群(73例)または現行ガイドラインの推奨に基づく保存的治療群(72例)のいずれかに無作為に割り付けて行われた。
主要評価項目は、術中または術後30日以内の死亡(手術死亡)、または追跡期間全体の心血管死の複合エンドポイント、主な副次評価項目は追跡期間中の全死因死亡とした。解析はintention-to-treat集団を対象とし、イベント累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、log-rank検定を用いて比較した。また、層別Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。
手術死亡の発生なし、早期手術群のイベント発生HRは0.09と有意に低下
早期手術群では、無作為化後2ヵ月以内に73例中69例(95%)で手術が実施され、手術死亡はなかった。
Intention-to-treat解析において、主要評価項目のイベントは早期手術群で1例(1%)、保存的治療群で11例(15%)発生した(HR:0.09、95%CI:0.01~0.67、p=0.003)。全死因死亡は、早期手術群5例(7%)、保存的治療群15例(21%)に発生した(HR:0.33、95%CI:0.12~0.90)。
保存的治療群では、突然死の累積発生率が4年時で4%、8年時で14%であった。
なお著者は、症例数および主要評価項目のイベント発生数が少ないこと、相対的に若い患者が組み込まれたことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)