潰瘍性大腸炎(UC)患者は非UC者に比べて、大腸がん罹患のリスクが高く、大腸がん診断時の進行度は低いが、大腸がんによる死亡リスクは高いことが示された。一方で、それらの過剰なリスクは時間の経過とともに大幅に低下することも認められたという。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOla Olen氏らによる、UC患者9万6,447例を対象とした住民ベースのコホート試験の結果で、著者らは、「国際的なサーベイランスガイドラインを改善する余地がまだあるようだ」と述べている。Lancet誌2020年1月11日号掲載の報告。
デンマークとスウェーデンのUC患者9万6,447例を対象にコホート試験
研究グループは、1969年1月1日~2017年12月31日に、デンマークのUC患者3万2,919例と、スウェーデンのUC患者6万3,528例の計9万6,447例を対象に、住民ベースのコホート試験を行った。一般住民コホートから対照群として94万9,207例をマッチングし、大腸がん罹患と大腸がん死亡について比較した。
UC患者は、国内患者登録名簿の中に2つ以上の適切な国際疾病分類(ICD)記録がある場合、または、ICD記録が1つと大腸生検レポートに炎症性腸疾患(IBD)を示す形態診断コードが認められた場合を解析対象とした。また、UC患者全員について、性別、年齢、出生年、居住地でマッチングした個人をデンマークおよびスウェーデンの全住民登録から適合参照として選出した。
Cox回帰分析を行い、腫瘍ステージを考慮したうえで、大腸がん罹患、大腸がんによる死亡のハザード比(HR)を求めた。
UCにより大腸がんリスクは増大、ただし直近5年ではリスクが低減
追跡期間中の大腸がん罹患者は、UC群1,336例(1.29/1,000人年)、対照群9,544例(0.82/1,000人年)だった(HR:1.66、95%信頼区間[CI]:1.57~1.76)。また、大腸がんによる死亡は、UC群639例(0.55/1,000人年)、対照群4,451例(0.38/1,000人年)だった(HR:1.59、95%CI:1.46~1.72)。
大腸がんのステージ分布を比較したところ、UC群は対照群に比べ進行度は低かったが(p<0.0001)、腫瘍ステージを考慮に入れても、UCで大腸がんの患者は、大腸がんによる死亡リスクが高かった(HR:1.54、95%CI:1.33~1.78)。
しかし、そうした過剰なリスクは、追跡期間中に低減していることが認められた。スウェーデン・コホートの直近5年の追跡期間(2013~17年)において、UC群の大腸がん罹患HRは1.38(95%CI:1.20~1.60、5年間でUC患者1,058例につき1件追加)で、大腸がんによる死亡HRは1.25(同:1.03~1.51、5年間でUC患者3,041例につき1件追加)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)