低線量ボリュームCT検診、肺がん死を抑制/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/12

 

 肺がんのリスクが高い集団において、ボリュームCTによる検診を受けた集団は、これを受けなかった集団に比べ、10年間の肺がんによる死亡率が低下し、肺がんを示唆する検査結果に対しフォローアップ処置を行う割合も低いことが、オランダ・エラスムス医療センターのHarry J de Koning氏らが行った「NELSON試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。全米肺検診試験(NLST)は、低線量CTによる肺がん検診(年1回で3回)は従来の胸部X線に比べ、肺がん死亡率を20%低減したと報告している。一方、このような肺がん検診の死亡に関する有益性を示した無作為化試験のデータは限られているという。

オランダとベルギーの地域住民ベース無作為化試験

 研究グループは、低線量ボリュームCTを用いた検診により、高リスクの男性参加者の追跡期間10年時の肺がん死亡率を25%以上低下させることを目標に、地域住民ベースの無作為化対照比較試験を実施した(オランダ保健研究開発機構などの助成による)。

 2003年と2005年に参加者登録が行われた。対象は、喫煙歴が1日15本以上を25年以上または1日10本以上を30年以上の現喫煙者または元喫煙者(禁煙から10年以内)であった。オランダとベルギーの4地域に居住する50~74歳の男性1万3,195例(主解析)と女性2,594例(サブグループ解析)が解析に含まれた。

 参加者は、低線量ボリュームCTによる検診(ベースライン、1、3、5.5年)を受ける群または受けない群(対照群)に無作為に割り付けられた。

 オランダとベルギーの全国レジストリと連携し、がんの診断と死亡の日付・原因に関するデータを入手した。判定委員会は、可能な場合に、肺がんが死亡の原因であることを確認した。2015年12月31日までに、すべての参加者が最短追跡期間10年に達した。

女性のほうが利益が大きい可能性も

 男性は、検診群が6,583例、対照群は6,612例であった。両群とも、年齢中央値は58歳(IQRは検診群55~63、対照群54~63)で、喫煙歴中央値は38.0 pack-years(IQRは両群とも29.7~49.5)だった。

 男性では、合計2万2,600件のCT検査が行われ、平均検診受診率は90.0%(95%信頼区間[CI]:76.9~95.8)であった。9.2%(2,069/2万2,600件)で、検診検査アウトカムを決定する前に、体積倍加時間を算出するための再CT検査が行われた。最終的に、2.1%(467/2万2,600件)が陽性で、呼吸器科医による精密検査を受け、肺がん検出率は0.9%(203/2万2,600件)であった。また、陽性反応適中度は43.5%だった。

 追跡期間10年時の肺がんの発生率は、検診群が1,000人年当たり5.58人(がん341個)、対照群は1,000人年当たり4.91人(がん304個)であった(率比:1.14、95%CI:0.97~1.33)。肺がんの59.0%(203/344個)が検診で検出され、12.8%(44/344個)は中間期がんであった。

 10年間で、検診群の156例、対照群の206例が肺がんで死亡した。肺がん死亡率は、検診群が1,000人年当たり2.50、対照群は1,000人年当たり3.30であり(10年時の累積肺がん死亡率の率比:0.76、95%CI:0.61~0.94、p=0.01)、検診群で有意に低下した。8年および9年時の率比もほぼ同じで、検診群で有意に良好だった。

 10年全死因死亡率は、検診群が1,000人年当たり13.93、対照群は13.76であった(率比:1.01、95%CI:0.92~1.11)。

 一方、女性では、追跡期間10年の肺がん死亡率の率比は0.67(95%CI:0.38~1.14)であった。また、7年時の率比は0.46(0.21~0.96)、8年時は0.41(0.19~0.84)、9年時は0.52(0.28~0.94)であり、男性に比べ良好な傾向が認められた。

 著者は、「ボリュームCT検診は、良好なアウトカムを損なわずに、偽陽性や不要な精密検査を減少させることが可能と考えられる」とまとめ、「女性は男性よりも利益が大きいと示唆されるが、本試験では女性は相対的に参加者が少ないサブグループであった。他のサブグループと共に、女性に関する研究を進める必要がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 西村 光世( にしむら みつよ ) 氏

一般財団法人健康医学協会附属 東都クリニック 院長

J-CLEAR推薦コメンテーター