急性心房細動で緊急部門に搬送された患者に対する、薬理学的除細動+必要に応じた電気的除細動(薬物ショック)と、電気的除細動のみ(ショック単独)はいずれも、洞調律の回復において高い有効性、迅速性、安全性を示し、再入院の必要性も回避することが、カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らが396例を対象に行った無作為化比較試験「RAFF2試験」の結果、示された。薬物ショック群では、薬理学的除細動が約半数に作用し電気的除細動に必要なセデーションを回避できたこと、また、電気的除細動のパッド貼付位置(前後方vs.前外側)による有意差がないことも示された。結果を踏まえて著者は、「緊急部門に搬送された急性心房細動患者では、即時の除細動が、優れたアウトカムに結び付く」とまとめている。Lancet誌2020年2月1日号掲載の報告。
カナダ11病院の緊急部門で無作為化試験
RAFF2試験は、薬物ショックとショック単独の洞調律への転換の比較を第1の目的とし、また電気的除細動の2つのパッド位置の有効性の比較を第2の目的とした。
2013年7月18日~2018年10月17日に、カナダ11ヵ所の病院の救急部門を通じて、成人の急性心房細動患者396例を登録し、2つのプロトコールによる無作為化比較試験を行い、薬物ショックとショック単独のアウトカムを比較した。
プロトコール1(無作為化盲検化プラセボ対照比較)では被験者を無作為に2群に分け(1対1、登録病院でも層別化)、一方にはプロカインアミド(15mg/kgを30分)静脈投与による薬理学的除細動を行い、その後必要に応じて最大3回まで電気的除細動(いずれも200J以上)を行った。もう一方の群には、プラセボ投与後、電気的除細動を行った。無作為化は、登録病院の研究員がオンライン電子データキャプチャーシステムを用いて行った。
プロトコール2(無作為化非盲検化ネステッド比較)では、電気的除細動の際に、パッドを右胸部・後背部に付ける群と右胸部・左前腋窩部に付ける群に無作為に割り付け比較した。被験者は、薬物投与30分時点で洞調律への転換が認められなかった患者を無作為化し、登録病院およびプロトコール1の割付による層別化も行った。
主要アウトカムは、無作為化後30分以降のあらゆる時点、および3回ショック直後の時点までの洞調律への回復とした。プロトコール1についてはITT解析を行い、プロトコール2では電気的除細動を受けなかった被験者は除外した。
洞調律回復は同等、電気的除細動のパッド位置の違いでも有意差なし
洞調律を回復したのは、薬物ショック群が204例中196例(96%)、ショックのみ群は192例中176例(92%)で有意差は認められなかった(絶対差:4%、95%信頼区間[CI]:0~9、p=0.07)。
自宅への退院者も、それぞれ97%(198例)、95%(183例)と同等だった(p=0.60)。また薬物ショック群では、106例(52%)が薬物投与のみで洞調律を回復した。フォローアップ中に重篤な有害イベント発生は報告されなかった。
プロトコール2の電気的除細動時のパッド位置の比較については、前後方(右胸部・後背部)と前外側(右胸部・左前腋窩部)の比較において、洞調律回復率はそれぞれ92%(108/117例)と94%(119/127例)と同等だった(p=0.68)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)