多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/28

 

 冠動脈疾患(CAD)のリスク評価モデルpooled cohort equations(PCE)と多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)を組み合わせることで、CAD発症の予測精度がわずかではあるが統計学的に有意に改善し、一部の個人集団においてリスク分類を改善することが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJoshua Elliott氏らが、観察研究の結果を報告した。著者は、「PCEでの遺伝情報の使用は、臨床で実施される前にさらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。

多遺伝子リスクスコアのみvs.PCEのみvs.両方の組み合わせで検証

 研究グループは、2006~10年にUK Biobankに登録された参加者のうち、一般的なCADを有する1万5,947例、およびそれらと年齢・性別をマッチングした同数の対照例を用いて、公表されているゲノムワイド関連解析の要約統計に基づくCADの多遺伝子リスクスコアの予測性能を最適化した。

 また、独立した35万2,660例(2017年まで追跡)のコホートを使用し、多遺伝子リスクスコア、PCEおよびその両方の組み合わせについて、CAD発症の予測精度を評価した。

 主要評価項目はCAD(心筋梗塞とそれに関連する後遺症)で、リスク閾値を7.5%として判別(discrimination)、較正(calibration)、再分類について評価した。

PCEに多遺伝子リスクスコア追加でCAD予測精度がわずかに改善

 検証モデルの予測精度評価に用いた35万2,660例(平均年齢55.9歳、女性20万5,297例[58.2%])において、追跡調査期間中央値8年でCADイベントの発生が6,272例確認された。

 CAD判別のC統計量は、多遺伝子リスクスコアのみが0.61(95%信頼区間[CI]:0.60~0.62)、PCEのみが0.76(95%CI:0.75~0.77)、および両方の組み合わせでは0.78(95%CI:0.77~0.79)であった。後者の2モデル(PCEのみと両方の組み合わせ)間のC統計量の変化は、0.02(95%CI:0.01~0.03)であった。

 モデルのキャリブレーション(較正)については、PCEによるリスクの過大評価が示唆され、再較正後に修正された。

 リスク閾値を7.5%としてPCEに多遺伝子リスクスコアを追加すると、ネット再分類改善(net reclassification improvement:NRI)は、CAD発症例で4.4%(95%CI:3.5~5.3)、非発症例で-0.4%(95%CI:-0.5~-0.4)であった(全体のNRIは4.0%、95%CI:3.1~4.9)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)