再発性多発性硬化症の再発率をublituximabが低減/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/05

 

 再発性多発性硬化症の治療において、抗CD20モノクローナル抗体ublituximabはピリミジン合成阻害薬teriflunomideと比較して、96週の期間における年間再発率を低下させ、MRI上の脳病変を減少させる一方で、障害の悪化リスクを抑制せず、インフュージョンリアクションを増加させることが、米国・スタンフォード大学のLawrence Steinman氏らが実施した「ULTIMATE I/II試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号で報告された。

10ヵ国の無作為化実薬対照第III相試験

 ULTIMATE I/II試験は、再発性多発性硬化症患者におけるublituximabの有効性と安全性を、teriflunomideとの比較において評価することを目的とする、同一デザインの2つの二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照第III相試験であり、2017年9月~2018年10月の期間に、10ヵ国の104の施設で参加者の登録が行われた(米国・TG Therapeuticsの助成による)。

 対象は、年齢18~55歳、再発性多発性硬化症(McDonald診断基準[2010年改訂版]を満たす)と診断され、過去2年間に少なくとも2回の再発がみられるか、スクリーニングの前年に1回の再発またはMRI検査で少なくとも1つのガドリニウム増強病変(あるいはこれら双方)が認められ、脳MRIで多発性硬化症に一致する異常所見が確認された患者であった。

 被験者は、ublituximabの静脈内投与(1日目に150mg、それ以降は15日、24週、48週、72週目に450mg)とプラセボの経口投与を受ける群、またはteriflunomideの経口投与(14mg、1日1回、95週目の最終日まで)とプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは多発性硬化症の年率換算の再発率とされ、1人年当たりの確定再発数と定義された。階層的に順序付けされた6項目の副次エンドポイントが設定された。

約半数でインフュージョンリアクションが発現

 ULTIMATE I試験に549例(ublituximab群274例、teriflunomide群275例)、ULTIMATE II試験に545例(272例、273例)が登録された。modified intention-to-treat集団における4つの群の平均年齢の幅は34.5~37.0歳で、女性の割合の幅は61.3~65.4%であった。追跡期間中央値は95週だった。

 年間再発率は、ULTIMATE I試験ではublituximab群が0.08、teriflunomide群は0.19(率比:0.41、95%信頼区間[CI]:0.27~0.62、p<0.001)、ULTIMATE II試験ではそれぞれ0.09および0.18(0.51、0.33~0.78、p=0.002)であり、両試験ともublituximab群で有意に低かった。

 ガドリニウム増強病変数の平均値は、ULTIMATE I試験ではublituximab群が0.02、teriflunomide群は0.49(率比:0.03、95%CI:0.02~0.06、p<0.001)、ULTIMATE II試験ではそれぞれ0.01および0.25(0.04、0.02~0.06、p<0.001)であり、いずれの試験でもublituximab群で有意に少なかった。

 2つの試験の統合解析では、12週の時点での障害の悪化の割合は、ublituximab群が5.2%、teriflunomide群は5.9%(ハザード比[HR]:0.84、95%CI:0.50~1.41、p=0.51)、24週時はそれぞれ3.3%および4.8%(0.66、0.36~1.21)であり、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。

 有害事象の統合解析では、ublituximab群の89.2%、teriflunomide群の91.4%で少なくとも1件の有害事象が発現し、Grade3以上の有害事象はそれぞれ21.3%および14.1%で認められた。

 最も頻度の高い有害事象は、ublituximab群がインフュージョンリアクション(47.7%)で、次いで頭痛(34.3%)、鼻咽頭炎(18.3%)、発熱(13.9%)、悪心(10.6%)の順であり、teriflunomide群は頭痛(26.6%)、鼻咽頭炎(17.9%)、脱毛(15.3%)、インフュージョンリアクション(12.2%)、下痢(10.6%)の順であった。重篤な有害事象はそれぞれ10.8%および7.3%で、重篤な感染症は5.0%および2.9%で発現し、いずれもublituximab群で多かった。

 著者は、「2つの試験とも、teriflunomideの先行研究に比べ障害の悪化の割合が低かったが、これは両試験の2つの群とも年率に換算した再発率が低かったため、再発に伴う障害の悪化の割合が低くなったことが原因の可能性がある」と指摘し、「既存の抗CD20モノクローナル抗体などの疾患修飾薬による治療との比較を含め、再発性多発性硬化症におけるublituximabの有効性と安全性を明らかにするために、より大規模で長期の試験が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)