オランダ・ユトレヒト大学のEwoud Schuit氏らは、検体の自己採取による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)迅速抗原検査キット3種類の感度について調査し、鼻腔拭い液の自己採取による検査の感度は、3種類ともSARS-CoV-2オミクロン株の出現により低下し、1種類のみ統計学的に有意であったことを示した。また、感度は検査の理由(自主検査陽性後の確認検査者の割合)に大きく影響されたこと、2種類については鼻腔に加えて口腔咽頭からの拭い液採取を追加することで感度が改善されたことを示し、「自主検査の結果が陽性の場合、確認検査は必要なく速やかに自主隔離し、自主検査が陰性の場合は偽陰性の可能性が否定できないため、一般的な予防策を順守しなければならない」とまとめている。BMJ誌2022年9月14日号掲載の報告。
有症状者を対象に検体自己採取による迅速抗原検査の診断精度を前向きに評価
研究グループは、オミクロン株流行期における、非監視下での鼻腔や口腔咽頭拭い液の自己採取による迅速抗原検査の診断精度を評価する目的で、前向き横断研究を行った。
対象は、2021年12月21日~2022年2月10日の期間に、検査のためオランダ公衆衛生サービスのCOVID-19検査施設3ヵ所を訪れたCOVID-19症状を有する16歳以上の6,497例であった。参加者に対し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法(参照テスト)のために施設スタッフが検体採取を行った後、自宅にて非監視下で鼻腔拭い液または口腔咽頭と鼻腔拭い液を自己採取する迅速抗原検査キット1つを渡し、3時間以内に自宅で検査を完了してもらった。
評価した検査は、Flowflex(ACON Laboratories製、鼻腔のみ、後述の第1期のみ)、MPBio(MP Biomedicals製、鼻腔のみと口腔咽頭+鼻腔)、およびClinitest(Siemens Healthineers製、鼻腔のみと口腔咽頭+鼻腔)で、オミクロン株出現期(2021年および2022年第1週)、オミクロン株が感染の>90%を占める第1期、>99%を占める第2期に分けて評価した。
主要評価項目は、RT-PCR法による検査を参照基準とした各検査の診断精度(感度、特異度、陽性・陰性的中率)、副次評価項目は検査の理由(自主検査陽性後の確認検査、症状、濃厚接触、その他の理由)、COVID-19ワクチン接種状況、SARS-CoV-2感染歴、性別、年齢(16~40歳、40歳以上)で層別化した診断精度とした。
感度は、鼻腔拭い液採取で約70~79%、確認検査者では上昇、口腔咽頭拭い液採取の追加で改善
第1期では、Flowflex群45.0%(279例)、MPBio群29.1%(239例)、Clinitest群35.4%(257例)が自主検査陽性後の確認検査者であった。鼻腔拭い液自己採取の感度は全体で、Flowflex群79.0%(95%信頼区間[CI]:74.7~82.8)、MPBio群69.9%(65.1~74.4)、Clinitest群70.2%(65.6~74.5)であった。感度は、確認検査者(それぞれ93.6%、83.6%、85.7%)が、その他の理由による検査者(52.4%、51.5%、49.5%)より著しく高かった。また、感度は、オミクロン株の感染に占める割合が29%から95%以上になると、Flowflex群で87.0%から80.9%(χ
2検定のp=0.16)、MPBio群で80.0%から73.0%(p=0.60)、Clinitest群で83.1%から70.3%(p=0.03)へ低下した.
第2期では、自主検査陽性後の確認検査者の割合がMPBio群53.0%(288例)、Clinitest群44.4%(290例)であった。口腔咽頭および鼻腔の両方から拭い液を自己採取した場合の感度は全体で、MPBio群83.0%(95%CI:78.8~86.7)、Clinitest群77.3%(72.9~81.2)であった。確認検査者における感度は、鼻腔拭い液自己採取と比較して口腔咽頭+鼻腔拭い液自己採取でわずかに高く(86.1% vs.87.4%)、その他の理由による検査者においては非常に高い(59.9% vs.69.3%)ことが示された。
著者は、「MPBioとClinitestのメーカーは、口腔咽頭拭い液と鼻腔拭い液の自己採取を併用する使用方法の拡大を検討することができ、他の迅速抗原検査キットのメーカーも上記と同様の評価を検討する必要がある」と指摘している。
(ケアネット)