複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬静脈内投与は、90日以内の感染性合併症または死亡に関して、2日間投与が5日間投与に対して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのElisabeth M. L. de Wijkerslooth氏らが、同国15施設で実施したプラグマティックな非盲検無作為化非劣性試験「APPIC(antibiotics following appendicectomy in complex appendicitis)試験」の結果を報告した。複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬の適切な投与期間は明らかになっていない。抗菌薬耐性の脅威が世界的に高まっていることから、抗菌薬の使用を制限する必要があり、それによって副作用、入院期間や費用も削減できるとされている。著者は、「今回の結果は、豊富な資源がある医療環境で実施される腹腔鏡下虫垂切除術に適用される。この戦略により、抗菌薬の副作用の減少や入院期間の短縮が期待できる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年1月17日号掲載の報告。
術後90日以内の感染性合併症または死亡の複合で評価
研究グループは、年齢8歳以上、米国麻酔科学会の術前状態分類がI~IIIの複雑性虫垂炎(術中評価で壊死、穿孔または膿瘍を認める)患者を、2日間投与群または5日間投与群に施設で層別化して1対1の割合に無作為に割り付け、セフロキシム(1,500mgを1日3回)またはセフトリアキソン(2,000mgを1日1回)+メトロニダゾール(500mgを1日3回)を静脈内投与した。初回投与は虫垂切除術後8時間以内に行うこととし、小児(8~17歳)では体重により投与量を調節した。
主要エンドポイントは、虫垂切除術後90日以内の感染性合併症(米国疾病予防管理センターの定義に基づく腹腔内膿瘍および手術部位感染)または死亡の複合エンドポイントとし、年齢と虫垂炎の重症度を調整した絶対リスク差(95%信頼区間[CI])を求め、非劣性マージンは7.5%と設定した。
アウトカムの評価は電子患者記録、ならびに虫垂切除術後90日の電話による構造化面接相談に基づいて行った。有効性は、intention-to-treat(ITT)およびper-protocol集団で解析。安全性アウトカムは、ITT集団にて解析した。
イベント発生率は2日間10% vs.5日間8%で非劣性
2017年4月12日~2021年6月3日の間に、1万3,267例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,066例が無作為に割り付けられた(2日間群533例、5日間群533例)。このうち、募集または同意に過誤のあった症例を除く1,005例(2日群502例、5日群503例)がITT解析集団となった。1,005例中955例(95%)で腹腔鏡下虫垂切除術が行われた。電話による追跡調査は1,005例中664例(66%)で完了した。
主要エンドポイントのイベントは、2日間群で51例(10%)、5日間群で41例(8%)発生した。年齢と虫垂炎の重症度で調整した絶対リスク差は2.0%(95%CI:1.6~5.6)であり、2日間投与の5日間投与に対する非劣性が示された。
合併症と再介入の割合は、2日間群と5日間群で同程度であった。
抗菌薬の副作用(主に悪心・嘔吐、下痢)は、2日間群9%(45/502例)、5日間群22%(112/503例)であり、2日間群が少なかった(オッズ比[OR]:0.344、95%CI:0.237~0.498)。一方、再入院は2日間群(12%、58/502例)が5日間群(6%、29/503例)より高頻度であった(OR:2.135、95%CI:1.342~3.396)。治療に関連した死亡例はなかった。
(ケアネット)