RET変異甲状腺髄様がん治療において、セルペルカチニブはカボザンチニブまたはバンデタニブに比べて、無増悪生存期間(PFS)および治療成功生存期間(FFS)の延長をもたらすことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJulien Hadoux氏らが行った第III相無作為化試験の結果で示された。セルペルカチニブは、選択性が高く強力なRET阻害薬で、第I・II相試験で進行RET変異甲状腺髄様がんに対する有効性が示されていたが、マルチキナーゼ阻害薬と比較した場合の有効性については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。
切除不能の局所進行、転移のあるキナーゼ阻害薬未治療の患者を対象に試験
本試験の対象は、病理学的に確認された切除不能の局所進行または転移のある
RET変異甲状腺髄様がんで、キナーゼ阻害薬未治療であり、試験登録前14ヵ月間に病勢進行が認められた12歳以上の患者とした。1次治療として、セルペルカチニブ(160mg、1日2回)と医師の選択によるカボザンチニブ(140mg、1日1回)またはバンデタニブ(300mg、1日1回)を非盲検で比較した。
被験者はセルペルカチニブ群または医師の選択によるカボザンチニブ/バンデタニブ群(対照群)に2対1の割合で無作為に割り付けられた。対照群の患者は、病勢進行後にセルペルカチニブ群へのクロスオーバーが認められた。
プロトコル規定の中間有効性解析での主要評価項目は、盲検下独立中央判定で評価したPFSだった。なお、PFSの有意性が認められた場合にのみ、FFSを副次評価項目として検証した。その他の副次評価項目は、全奏効率および安全性だった。
セルペルカチニブ群はPFS、FFSとも未到達
2020年2月~2023年3月に19ヵ国176施設で、合計291例が無作為化された(セルペルカチニブ群193例、対照群98例[うちカボザンチニブ73例])。
追跡期間中央値12ヵ月時点で、PFS中央値は、セルペルカチニブ群は未到達、対照群は16.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.2~25.1)だった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.48、p<0.001)。12ヵ月時点のPFS率は、セルペルカチニブ群86.8%(95%CI:79.8~91.6)、対照群65.7%(51.9~76.4)だった。
FFS中央値は、セルペルカチニブ群は未到達、対照群は13.9ヵ月だった(病勢進行や治療関連有害事象または死亡による治療中止に関するHR:0.25、95%CI:0.15~0.42、p<0.001)。12ヵ月時点のFFS率は、セルペルカチニブ群86.2%(95%CI:79.1~91.0)、対照群62.1%(48.9~72.8)だった。
全奏効率は、セルペルカチニブ群69.4%(95%CI:62.4~75.8)、対照群38.8%(29.1~49.2)だった。
減量に至った有害事象の発現割合は、対照群77.3%に対してセルペルカチニブ群は38.9%だった。治療中止に至ったのは対照群26.8%に対してセルペルカチニブ群は4.7%だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)