医療一般|page:119

高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。  小田倉氏はまず、以下の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。

ペムブロリズマブの去勢抵抗性前立腺がんおよびEGFR陽性非小細胞がんの第III相試験/MSD

 Merck社は2023年2月28日、第III相試験KEYNOTE-641およびKEYNOTE-789の最新情報を公開。転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)において、ペムブロリズマブとエンザルタミドおよびアンドロゲン除去療法(ADT)との併用を評価する第III相KEYNOTE-641試験については、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき中止する。中間解析において、ペムブロリズマブとエンザルタミドおよびADTの併用療法では、プラセボ+エンザルタミドおよびADTと比較して、2つの主要評価項目である画像上の無増悪生存期間(rPFS)または全生存期間(OS)の改善が確認されず、OSについては事前に設定した無益性の境界(futility boundary)を超えた。

日本人の認知症タイプ別死亡リスクと死因

 近年の認知症に対する医療および長期ケアの環境変化は、疾患の予後を改善している可能性がある。そのため、認知症の予後に関する情報は、更新する必要があると考えられる。そこで、医薬基盤・健康・栄養研究所の小野 玲氏らは、日本における認知症のサブタイプ別の死亡率、死因、予後関連因子を調査するため、クリニックベースのコホート研究を実施した。その結果、日本における認知症サブタイプ別の死亡リスクや死因の重要な違いが明らかとなった。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年2月6日号の報告。

日本におけるオミクロン期のコロナワクチンの有効性は?/長崎大

 長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの多施設共同研究チームは、2021年7月1日より、日本国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン効果のサーベイランス「VERSUS(Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2)」を実施している。オミクロン株BA.1/BA.2の流行期における新型コロナmRNAワクチンの効果についてVERSUSのデータを基に評価したところ、初回シリーズの接種により緩やかな予防効果が得られ、さらに、有症状感染を防ぐにはブースター接種がより効果的であったことが明らかとなった。本結果は、Expert Review of Vaccines誌オンライン版2023年3月8日号に掲載された。

ヒトもカロリー制限で老化が遅くなる可能性

 長生きの秘訣は、食べる量を減らすことかもしれない。その可能性を示唆する研究結果が、「Nature Aging」に2月9日掲載された。論文の上席著者である、米コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院のDan Belsky氏は、「われわれの研究の主要なポイントは、ライフスタイルの修正によって生物学的な老化のペースを遅らすことができる可能性を示せたことだ」と述べている。  これまでに、動物実験からは、与える餌の量を減らすと長生きになることを示唆するデータが報告されている。しかし、ヒトでも同様の効果を期待できるのかどうかは分かっていない。今回発表された研究について著者らは、カロリー制限で長寿になれる可能性をヒトで示し得た初の研究だとしている。

新薬追加のWeb版「GIST診療ガイドライン」、診療経験少ない非専門医にも

 日本癌治療学会は稀少腫瘍研究会の協力のもと、「GIST診療ガイドライン2022年4月改訂 第4版」を発刊し、2023年3月4日、本学会ホームページにWeb版を公開した。GIST(Gastrointestinal stromal tumor、消化管間質腫瘍)は、全消化管に発生する間葉系腫瘍で、疫学的には10万人に1~2人と消化器系の稀少がんであるため、患者の診療経験が少ない臨床医も多い。そのため、本ガイドライン(GL)に目を通し、いざという時のために備えていただきたい。そこで、今回、本GL改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一氏(兵庫医科大学病院 主任教授/診療部長)に、本書の目的やおさえておく内容について話を聞いた。

PTSDやうつ病に対するドパミンD2受容体遺伝子変異の影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病のリスク因子として、ドパミンD2受容体遺伝子の変異が多くの研究で評価されているが、その結果は一貫していない。中国・北京林業大学のXueying Zhang氏らは、ドパミンD2受容体遺伝子変異とPTSDおよびうつ病リスクとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、ドパミンD2受容体遺伝子の変異は、PTSDおよびうつ病の遺伝的な感受性に潜在的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月4日号の報告。

2歳までの下気道感染、成人期の呼吸器疾患死リスク約2倍/Lancet

 幼児期に下気道感染症に罹患すると、肺の発達が阻害され、成人後の肺機能の低下や慢性呼吸器疾患の発症リスクが高まるといわれている。そのため、幼児期の下気道感染症の罹患は、呼吸器疾患による成人早期の死亡を引き起こすのではないか、という仮説も存在する。しかし、生涯を通じたデータが存在しないことから、この仮説は検証されていなかった。そこで、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJames Peter Allinson氏らは、1946年の出生コホートを前向きに追跡した。その結果、2歳未満での下気道感染があると、26~73歳の間に呼吸器疾患によって死亡するリスクが、約2倍となることが示された。Lancet誌オンライン版2023年3月7日号の報告。

貯まったポイントは商品券と交換がダントツ/医師1,000人アンケート

 日常生活で当たり前となったポイント付与と使用。最近では、ポイントを目当てに活動する「ポイ活」という言葉もうまれ、さまざまな情報交換がウェブサイトなどで行われている。  この「ポイ活」について、医師がどの程度の頻度で、どの分野で行い、貯めたポイントを何と変換しているのか、今回会員医師1,000人にアンケート調査を行った。アンケートは、2月22日にCareNet.comのWEBアンケートにて全年代、全診療科に対して実施した。

ペニシリンアレルギー陰性の結果は薬局にきちんと伝わっていない可能性

 ペニシリンアレルギーがあると考えられていた患者が、検査で実際にはアレルギーはないと判定された場合、ペニシリンアレルギーに関する警告は診療記録や薬局の登録情報から削除されるはずである。しかし、そのようなラベルが常に外されているわけではないことが、新たな研究で明らかにされた。NYUランゴン・ロングアイランド病院のAlthea Marie Diaz氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI 2023、2月24〜27日、米サンアントニオ)で発表され、要旨は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」2月号(増刊号)に掲載された。

中年期から心臓の健康に気を付けると脳の健康も維持される―AHAニュース

 心臓の健康状態が良好であることは脳の健康にとっても重要であり、脳血管疾患や認知症のリスクの抑制につながることが明らかになっている。では、そのような違いを生み出すための行動を、人生の中盤以降に始めたのでは遅すぎるのだろうか? 新たに報告された研究によると、その疑問の答えは「NO」のようだ。  米国脳卒中協会(ASA)主催の国際脳卒中学会(ISC2023、2月8~10日、ダラス)で報告されたこの研究により、心臓の健康状態を改善するための中年期以降の行動が、約20年後の脳血管疾患や認知症のリスクの低さと関連のあることが分かった。発表者である米ミネソタ大学のSanaz Sedaghat氏は、「わずかな改善であっても将来的に効果が現れる可能性がある」と述べている。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

医師への問い合わせメールはいずれ有料になる?

 電子メール(以下、メール)はその手軽さから、医師と患者間の重要なコミュニケーションの一形態となり、医師の元には毎日、患者から大量のメッセージが届く。こうした状況を受け、米国の一部の病院や医療システムが、患者からのメールへの対応に要する医師の仕事の内容や量に応じて、料金を請求し始めている。  ただし現状では、このような制度を採用している医療機関はごく一部であり、また、請求が発生する医師の返信メールもわずかな割合を占めるに過ぎない。しかし、一部の患者支援者からは、このような請求が、医療へのアクセス拡大のための選択肢の制限につながりかねないとの懸念が示されている。そのような患者支援者の一人である、米Patient Advocate Foundation(患者支援基金)のCaitlin Donovan氏は、「少額の費用負担でも、患者のサービスの利用減少につながることはすでに明らかになっている」と話す。

米国では数年以内に鳥インフルエンザワクチンの試験的な接種へ

 米国保健当局が、持続する鳥インフルエンザの流行を食い止めるために、家禽へのワクチン接種を検討している。米国農務省(USDA)の動植物衛生検査部(APHIS)によると、2022/2023年シーズンで鳥インフルエンザにより死亡した家禽が5839万羽(2月17日時点)に上ったことを受け、数年以内に最初の鳥インフルエンザワクチンの試験的な接種を開始する予定だという。  今シーズンの流行では、全米50州中47州で家禽からウイルスが検出されている。野鳥への拡大も全州で確認されているが、死亡した鳥の多くは商業用の家禽であるという。しかし、ワクチン接種により問題が解決するわけではない。CBSニュースは、商業用の家禽にワクチンを接種すると、家禽製品の輸出が難しくなる可能性があると報じている。家禽獣医師のDavid Swayne氏は、「保健当局は目下、何を理由にワクチン接種に踏み切るのかを検討しているところだ。ある地域の養鶏場で大量の鶏が感染しているからなのか、ある程度の経済的損失が見込まれるからなのか。あるいは隣の州で感染が発覚したことに懸念を覚えるからなのか。これは極めて難しい問題だ」とCBSニュースに対して語っている。

ベンゾジアゼピンの使用および中止に伴う離脱症状とその期間は

 ベンゾジアゼピンの漸減や中止を行うと、さまざまな症状が一定期間発現することがある。このように数ヵ月~数年間続くこともある症状のメカニズムは、数十年前から報告されているものの、いまだ解明されていない。米国・Benzodiazepine Information CoalitionのChristy Huff氏らは、ベンゾジアゼピンの使用および中止に関連する急性および慢性的な離脱症状を明らかにするため、インターネット調査結果の2次解析を行った。その結果、ベンゾジアゼピンの漸減および中止でみられる急性で一過性の症状は、多くのベンゾジアゼピン使用患者が経験する持続的な症状とは性質や期間が異なる可能性が、改めて示唆された。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2023年2月6日号の報告。

DELIVER試験を踏まえた慢性心不全治療の今後の展望/AZ

 アストラゼネカは「フォシーガ錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下フォシーガ)」の添付文書が改訂されたことを機に、「慢性心不全治療に残された課題と選択的SGLT2阻害剤フォシーガが果たす役割」と題して、2023年3月2日にメディアセミナーを開催した。  セミナーでは、はじめに阪和病院・阪和記念病院 統括院長・総長 北風 政史氏より、「慢性心不全治療の現状とDELIVER試験を踏まえた今後の展望」について語られた。

生後6ヵ月~4歳児に、ファイザー2価ワクチン追加接種を承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は3月15日、ファイザーの新型コロナウイルスのオミクロン株BA.4/BA.5対応2価ワクチンについて緊急使用許可(EUA)を修正し、生後6ヵ月~4歳の小児において、同社の1価ワクチンの3回接種(初回シリーズ)が完了してから少なくとも2ヵ月後に、2価ワクチンによるブースター接種1回を行うことができることを発表した。  2022年12月に、生後6ヵ月~4歳の小児は、1価ワクチンの初回シリーズの2回目までを接種した者に対して、3回目に2価ワクチンを接種することが承認されていた。今回の生後6ヵ月~4歳への2価ワクチンブースター接種の承認では、上記の3回目に2価ワクチンを接種した小児は対象外となり、初回シリーズをすべて1価ワクチンで3回接種した者のみが対象となる。

BRCA1/2遺伝子変異のある女性では50歳以降もがんリスクが高い

 女性でのBRCA1またはBRCA2遺伝子の変異は、乳がんおよび卵巣がんの若年での発症リスクを高めることが知られている。しかし、これらの遺伝子変異を有する女性では、50歳以降も乳がんや卵巣がんを中心とするがんの発症リスクが高いことが、新たな研究で明らかにされた。このリスク上昇は、がんの既往歴がなくても認められたという。トロント大学(カナダ)看護学分野のKelly Metcalfe氏らによるこの研究の詳細は、「Cancer」3月15日号に掲載された。

ミトコンドリア超複合体の「見える化」で筋力を高める薬物を発見

 筋肉でエネルギーを産生する際に重要な「ミトコンドリア超複合体」の可視・定量化(見える化)に成功したとする、東京都健康長寿医療センター研究所の井上聡氏らの論文が、「Nature Communications」に1月25日掲載された。ミトコンドリア超複合体を増やして筋肉の持久力を高める薬剤も見つかったという。  筋肉は運動のために大量のエネルギーを必要とし、そのエネルギーは細胞内小器官であるミトコンドリアによって作られている。ミトコンドリアの内部では「複合体」と呼ばれるタンパク質同士が結合して、さらに大きな「ミトコンドリア超複合体」という集合体を作ることで、より多くのエネルギーを産生している。ただ、これまでは生きた細胞(生体内)のミトコンドリア超複合体を観察することができず、研究の足かせとなっていた。そこで井上氏らは、まず、ミトコンドリア超複合体の可視化に取り組んだ。

糖尿病がある人の3人に1人は病気を‘恥’と感じた経験あり

 糖尿病がある人の3人に1人は、糖尿病であることを恥ずかしく感じた経験があるというデータが報告された。神戸市立看護大学看護学部の稲垣聡氏、糖尿病内科まつだクリニックの松田友和氏らが行った横断研究の結果であり、詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care」に12月13日掲載された。恥ずかしさを感じた経験のある人は精神的苦痛を強く感じており、幸福感が低いことも明らかになったという。  近年、糖尿病に関するスティグマが、糖尿病のある人の生活の質(QOL)を低下させることへの関心が高まっている。スティグマとは「汚名」や「不名誉」といった意味。誤った情報に基づくスティグマが存在すると、対象者が社会に受け入れられにくい状況が生じる。糖尿病のある人の場合、スティグマのために糖尿病であることを恥と捉え、病気を隠そうとしたり、食事の際に周囲の人に合わせて健康的でない食べ物を食べたり、人目を避けてインスリン注射や血糖測定をするといった行動につながる。

パキロビッドパック600/300が薬価収載/ファイザー

 ファイザー(日本)は3月15日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬の「パキロビッドパック600」および「パキロビッドパック300」(一般名:ニルマトレルビル/リトナビル)が薬価基準に収載されたことを発表した。薬価はそれぞれ、パキロビッドパック600(1シート)が19,805.50円、パキロビッドパック300(1シート)が12,538.60円となる。両パッケージともに、2023年3月22日から一般流通が開始される予定。